認知症と「歩行」の重要な関係、最新の研究結果で低コスト予防法に光明Photo:PIXTA

昨年、話題になった認知症治療の新薬「アデュカヌマブ」は、日本での承認が見送りとなった。課題の一つが、同薬の価格の高さだ。また認知症は早期発見が鍵となるが、発見のための検査が高額になることも。こうした認知症の早期発見、早期の段階での治療・認知症の進行予防に立ちはだかる「お金の壁」は、大きな課題となっている。そんな中、低コストで実施可能な方法の効果を示す研究の成果が発表された。その内容とは。(医療ジャーナリスト 木原洋美)

注目の認知症新薬は日本で承認ならず
高過ぎた「お金の壁」

 2021年6月、「アメリカで認知症の新薬が条件付きながら約20年ぶりに承認された」とのニュースが話題になった。新薬の名は「アデュカヌマブ」。アルツハイマー型認知症の発症に大きく関わっているとされるアミロイドβタンパク質(Aβ)の凝集体を標的とする化合物で、認知機能の低下(悪化)を抑えられるとのことだった。

「効果が期待されるのは、軽度認知障害(MCI)および軽症のアルツハイマー病の患者さんに対してです。神経細胞が元気なうちに原因物質を取り除くことで発症を遅らせる」

 アルツハイマー病専門医の新井平伊医師(アルツクリニック東京院長)も大きな期待を寄せていたのだが、残念。欧州医薬品庁が「アデュカヌマブの有効性や安全性が明確に示されていない」として承認を見送ったことに倣ったのか、日本での承認も見送りとなってしまった。

 最大の理由は「費用対効果の低さ」だ。試験で確かめられた予防効果23%は、統計学的には意義ある数字だが、臨床的には弱い。

 しかも同薬の販売価格は投与1回で約47万円、年間で610万円もかかる。高額な薬価が議論を呼んだがんの治療薬「オプジーボ」よりもさらに高額とあっては、厳しい評価も致し方ないのかもしれない。

 やはり、認知症治療薬は夢のまた夢なのか。がっくり来ていたところ先日、日本発の明るいニュースが飛び込んできた。低コストでできる早期診断法と治療法に関する情報だ。