オーストラリア労働党を率いるアンソニー・アルバニージー新首相はグリーンエネルギーの拡大を公約に掲げている。だが全国的な電力危機は、化石燃料の利用削減が困難であることを示している。豪州の電力危機は米国の政治家にとって警告となる。彼らが聞く耳を持っていればの話だが。電力市場を運営する豪エネルギー市場オペレーター(AEMO)は6月、停電を防ぐため、全国規模の電力スポット市場を一時停止した。さらに、化石燃料を使用する発電事業者に稼働に関する指示を出すとともに、価格を固定した。先週になって市場規制を解除したが、価格が急騰した場合は再び規制される可能性があると警告した。気候変動問題を重視する豪州の左派勢力は、化石燃料会社が市場を操作していることが混乱の原因だと非難している。聞き覚えがあるのではないだろうか。また、石炭火力発電所が気候変動対策による規制で営業停止を余儀なくされる前に、意図的に供給を抑えて電気料金を押し上げ、利益拡大を図っているとの批判もある。いつものように、真の原因は誤ったエネルギー政策にある。豪州は豊富な天然ガス埋蔵量を抱えているが、南部の大都市圏にガスを供給するパイプラインの輸送能力が不足している。同国の電源構成に占める石炭の割合は約60%と依然大きく、再生可能エネルギーは3分の1程度に過ぎない。再生エネの割合は米カリフォルニア州と同じくらいで、同州では似たような電力危機が起きている。