仕事や人間関係などから「心の疲れ」を解消できない人は多いだろう。「感情をうまくコントロールできない」「ネガティブな思考を引きずる」ことに悩み、生きづらさを感じている人もいるかもしれない。
そこで疲弊したメンタルの改善に役立つのが、5万人以上を変えた習慣化のプロ・古川武士氏の著書『書く瞑想 1日15分、紙に書き出すと頭と心が整理される』だ。本書は心を整え、充実感をもって自分らしい人生を生きるための「自己回復の技術」を解説している。人気の「ジャーナリング」「モーニングページ」などの効能を踏まえ「心を整えるメソッド」を体系化した1冊である。
本記事では、本書の内容をもとに、不安や焦り、怒り、メンタル不調を解消する「書く瞑想」の基本メソッドをご紹介する。(構成:市川有人)
メンタル不調を起こすストレスだらけの社会
今日、私たちはストレスだらけの環境で生きている。仕事や子育て、人間関係、SNS、世間体などに振り回され、心に余裕を持つことは簡単ではない。
コロナ禍で人との関わりが減り、孤独や不安、焦りを強く感じる人も増えている。誰もが自分で自分の心をメンテナンスしないといけない時代に生きているのだ。
そこで大きな効果を発揮するのが「書く瞑想」だ。
紙とペンさえあれば、今すぐ誰でも実践できる
ストレスの根本と向き合って解決するのではなく、ストレスを低減する別のアプローチとしてマインドフルネス瞑想がますます注目されているが、「書く瞑想」を身につけることは、ストレスフルな社会で自分を守る大きな武器となる。
グーグルではマインドフルネスを実践するワークとして「ジャーナリング」を取り入れているが、これは通称「書く瞑想」としても認知されている。
ここでは「書く瞑想」を実践する超入門として、初心者が始めやすいオススメの書き方をご紹介しよう。紙とペンさえあれば今すぐ誰でも簡単にでき、ストレスを緩和する大きな効果を実感できるはずだ。
「放電」「充電」で感情を吐き出す
書き方は簡単だ。1日1回、その日を振り返って、
「あなたの感情、気分、エネルギーを下げたものは?」(放電ログ)
「あなたの感情、気分、エネルギーを上げたものは?」(充電ログ)(P.72、74)
について箇条書きで書き出してみよう。それを「放電ログ」「充電ログ」と呼ぶ。例えば、以下のように書いてみたとする。
◆放電ログ
・ついお昼ご飯を食べ過ぎてしまった
・仕事で出さなければいけない報告書をまた先延ばししてしまった
・イライラして子どもに怒ってしまった(P.72)
◆充電ログ
・書斎でゆっくり30分、読書ができた
・家族と一緒にご飯を食べることができた
・上司から「資料わかりやすいね」と褒められた(P.74)
ここでのポイントは思いつく限り「網羅的に」書き出すことだ。どんなことでもいいので、瞬間的に思いついたことを吐き出してみる。
すると不思議なことに、言葉に書き出して自分と切り離すことで、マイナス感情は浄化されストレスが緩和される。プラス感情を書き出すと、つい見過ごしていた感情を改めて味わえるので心の充足にもつながるのだ。
芋づる式に、呼吸するように書く「セルフトーク」
さらに「書く瞑想」の効果を実感するには、「セルフトーク」(つぶやき)を実践してほしい。
放電・充電ログで出した出来事や感情の「1つ」にフォーカスして、今度は連想的、自己対話的に書き出していくものだ。ポイントは思考ではなく、「感情」を書き出すこと。例えばこんな感じだ。
◆放電セルフトーク
「今、何が一番嫌なのか、つらいのか?」
なんか、忙しいのに達成感がない。忙殺されている。プロジェクトが多いし、やっていることは好きだけど、1つ1つが味わえていないかも。達成感もないけど、それと同じぐらい嫌なのは焦りかもしれない。いや、何かが漏れている恐怖がある。一体何が漏れているのだろう。タスク管理がおろそかになっているから、ぐるぐる思考でモヤモヤしているのかもしれない。(P.80)
◆充電セルフトーク
「今、一番良いと感じていることは何か?」
仲間とのつながりを深く感じている。プロジェクトメンバーとは同じ情熱を感じているし、これが本当に豊かだ。共創することが自分にとって重要。使命が同じならば、結果は急がなくてもじっくり共に成長していけばいい。改めて、深い想いを共有できる人とつながっていることに満足感を感じている。今度の会議では、より目標を共有していくことでもっと加速していける!!(P.81)
こちらは思いつくままに「文章形式」で書き出す。日本語としておかしくても気にする必要はない。
ロジカルな自己分析ではなく、心に浮かぶ言葉をどんどん書き出していこう。焦りが浮かんだら、なぜ焦っているかを考えないこと。あえて「焦っている、なぜだろう?」とまず書いてみる。
解決策を考えるのではなく、その時の感情を素直に言葉にする。どうつらいのか、感じるままに心が生み出す言葉を拾い続けること。湧き上がってくる言葉をひたすら書き出していくのだ。
連想的に書き始めると、予想外のところに連れて行かれる
「心と直感から湧き上がる言葉を、思考で検閲しないことです」(P.67)
「本音の言葉は、完成された形で湧いてくるわけではなく、最初の言葉が呼び水となって、徐々に深い部分が湧き上がってきます」(P.82)
そうすると、連想的にどんどん自分の中から言葉が生み出されていき、自分でも気づかない感情を芋づる式に引っ張り上げることができる。
思考で自分と対話しても、なかなか自分の本音にアクセスできない。こう思われたい、こう見せたいなど、無意識に自分の弱さをガードする感情が本音を隠してしまうのだ。
書き出すだけで、新たな気づきが生まれる
書くという行為は思考の先に生まれるように感じるが、思考を駆動する限り堂々巡りになりがちだ。
ロジカルな答えや常識的な正しさではなく、自分がどう感じたのか、何を良い・悪いと思ったのか、自分の心や感情がどう反応したかを素直に書き出そう。
そうすると、書きながらしっかりと「気づく」ことができる。書いて自分との対話を進めると、自分が大切にすることがはっきりし、頭の中が徐々に片づいていく感覚を味わえるだろう。ただ書くだけで、自分を客観的に認識できるのだ。
「心が何に乱されているのかを言語化していくことで、心と自分が切り離されます。結果、客観視してその揺れから離れることができ、メンテナンスできます」(P39)
ストレスの多い社会でしなやかに生き抜いていくには、知識や思考力、ノウハウ以上に、自分を深く知り、自分の心の機微を感じ取る「自己感受」のトレーニングが有効だ。「書く瞑想」を習慣にすれば、その効果的なトレーニングになり、心の疲れを解消しながら、自分を守ることができるだろう。
(本原稿は『書く瞑想──1日15分、紙に書き出すと頭と心が整理される』をもとに執筆しています)
やることばかりのカオスの毎日から脱出する
毎日やるべきことが山積みで、頭も心もいつもごちゃごちゃ。
それをスッキリさせ、シンプルに生きたいと思いませんか?
「いつも、不安と焦りで心に余裕がない」
「やるべきことばかりで、やりたいことに時間が取れない」
「生活リズムが最悪。朝は遅いし、夜ふかしの毎日を変えたい」
「マイナスの考えがぐるぐる巡って疲弊する」
「自分のやりたいことって何だろう? それを考える時間すらない」
心も、生活も、人生もごちゃごちゃしている。バタバタと忙しいのに心に充実感がない。そう感じる人は少なくないでしょう。
『書く瞑想』は「書く」ことで頭と心を整え、自分らしい人生をシンプルに送るための方法をご紹介します。
「書く」ことで不安やストレスをなくし
自分を深く知る
「書く」ことには様々な効果があることが学術的な研究からもわかっています。
不安やストレスを抑制したり、自分の感情を可視化することで客観的に自己認識したりすることができます。
グーグルでは、マインドフルネスを実践する手法として「ジャーナリング」という、思いつくままに書き続けるワークを取り入れています。
意識的な思考ではなく、自分でも気づかない深層の「感情」をすくい上げることで、自分への理解が進みます。
ぐるぐると堂々巡りしていた悩みが、「感情」に焦点を当てることで不思議なくらい解決されます。
5万人をサポートした
習慣化のプロが行き着いた「書く」習慣
私は習慣化コンサルタントとして、「人生が変わった! という感動を共に味わう」というミッションのもとに、10年以上この分野でメソッド開発、個人コンサルティング、企業研修を行ってきました。
これまで21冊の本を書き、累計95万部になり、中国、韓国、タイ、ベトナム、台湾でも10万部以上の書籍が翻訳されています。
企業研修などを合わせると5万人以上の人々の成長に関わり、個人のクライアントでは1000人以上の習慣化の支援をしてきました。
どうすれば「人生を変えられるのか?」「自分らしく豊かに生きられるのか?」を習慣化という観点から探求し続けてきた結果、行き着いたシンプルな習慣が「書く」ことでした。
真の気づきからしか人は変われない
人生の変化は、気づきから始まります。「そうか!」と腹落ちしたとき、人は本当に変わっていくきっかけをつかむことができます。ディープインパクトの気づきが自分の内側に起きると、人はびっくりするぐらい行動習慣も思考習慣も、そして人間関係も変わっていきます。
では、どうすればこのディープインパクトの気づきを得られるのか?
その答えは、書くことで「自己対話」を続けることにあります。
自分を感じながら書くことは、すなわち瞑想です。瞑想的に書くことで、大切な感情に気づき、自分を見つけて、生活・人生を豊かなものにすることができます。
このメッセージを主題としているので、本書のタイトルを『書く瞑想』としました。これを実現する書くメソッド体系を「感情ジャーナル」と呼んでいます。
自己実現のために「書く習慣」を身につける
この「感情ジャーナル」を書くことで、実践者からは次のような喜びの声が寄せられています。
「不安を書き出すことで、気持ちの空回りが減った」
「1ヵ月に1つずつ習慣化できるようになって、自分の生活に主導権が戻った」
「大量のやるべきことを、冷静に仕分けることができるようになった」
「生活リズムが負のスパイラルから抜けて、体調が良くなった」
「マイナスの考えだけにとらわれず、小さな感謝や幸福を感じられるようになった」
「少しずつ自分のやりたいことが見えてきた」
「感情ジャーナル」を書くことで、「どうしよう」が「こうしよう」に変わっていきます。
現実がどんどん整理され、心が整っていきます。
生きている限り、自己との関係には終わりがありません。
禅に「座禅」があるように、自己実現に「書く」というシンプルな習慣があることで求道できます。
「乱れた生活を整えたい」を「良いリズムで生活ができる」へ
「ダメな自分を変えたい」を「自分に成長を感じる」へ
「人生の閉塞感を脱したい」を「自分の人生を生きている」へ
こう変えていきたい人に向けて、本書のノウハウを公開します。
本書の最終的なゴールは、「自己対話を繰り返しながら、自分らしく人生をシンプルにしていく」ことにあります。
あなたが自らの内側にある、変化する力を引き出すのが「感情ジャーナル」です。
古川武士(ふるかわ・たけし)
習慣化コンサルティング株式会社 代表取締役。
関西大学卒業後、日立製作所などを経て2006年に独立。
5万人のビジネスパーソンの育成と1000人以上の個人コンサルティングの現場から「習慣化」が最も重要なテーマと考え、日本で唯一の習慣化をテーマにしたコンサルティング会社を設立。オリジナルの習慣化理論・技術をもとに、個人向けの習慣化講座、企業向けの行動変容・習慣化研修を行っている。真の自己実現の鍵は書くことであると考え、著者自身と豊富なコーチング経験から、「感情ジャーナルメソッド」を開発。活用した体験者から「人生が変わった!」「やりたいことが見つかった!」という声が寄せられている。
主な著書に、『30日で人生を変える「続ける」習慣』『新しい自分に生まれ変わる「やめる」習慣』(以上、日本実業出版社)、『マイナス思考からすぐに抜け出す9つの習慣』『力の抜きどころ』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)などがあり、21冊95万部を超え、中国・韓国・台湾・ベトナム・タイでも広く翻訳されている。NHK「ごごナマ」を始め、TV・ラジオ・新聞など150のメディアに出演している。
本書の主な内容
はじめに──やることばかりのカオスの毎日から脱出する
・5万人をサポートした習慣化のプロが行き着いた「書く」習慣
・真の気づきからしか人は変われない
・人生を変える「感情ジャーナル」3つのステップ
・「書くメソッド」に秘められた3つのエッセンス
・自己実現のために「書く習慣」を身につける
第1章 書いて、整える──「感情ジャーナル」の自己整理効果
・忙しいのに、やりがいがない日々を抜け出したい!
・「感情」は重層的で複雑に絡み合っている
・書くことですべて整理されていく
・なぜ、書くことで整理されるのか?
・書くことの3つの科学的効果
・「手書き」の恐るべき創造的効果
・「感情ジャーナル」メソッドの全体像
・書くと段階的に自分が良くなっていく
第2章 考えない。呼吸するように書く──「書く瞑想」の書き方
・なぜ、自己分析はうまくいかないのか?
・心の整理は「書く瞑想」から始める
・「放電・充電ログ」で両面から網羅的に吐き出す
・「放電」と「充電」を書く理由
・「セルフトーク」で思いつくままに書き出す
・芋づる式に呼吸するように書く
・マイナス感情にこそ問題のサインがある
・朝15分、書く瞑想から始めよう
・「書く瞑想」5つの効果
・実践者の声1「漠然とした日々のモヤモヤが減った!」
第3章 出す、分ける、変える──「書く片づけ」の3ステップ
・「書く片づけ」で自分を探る
・「モノの片づけ」と「心の片づけ」に共通すること
・【ステップ1】とにかく全部出すことから始める
・【ステップ2】必要なこと・不要なことを感情基準で分ける
・感情基準で決められる「7つの質問」
・【ステップ3】必要なことを増やし、不要なことを減らす
・人生で大切なことに集中する
第4章 書いて、結晶化させる──月1回の振り返りジャーナリング
・書く片づけでやること
・月に1回、5つのワークで振り返る(マンスリー・ジャーナリング)
・【ワーク1】インパクト図から感情パターンを探る
・【ワーク2】価値観マップで判断軸を作る
・【ワーク3】理想のビジョンを描く
・【ワーク4】行動プランで現実を変えていく
・【ワーク5】習慣化プランで日々を変えていく
・統合してシンプルにしていく
・心のままに書いたことに「人生のキーワード」は眠っている
・実践者の声2「本当の自分が立ち上がってきた」
第5章 書き出すと、変わっていく──「感情ジャーナル」書き方の実践例
・カオスの日々から脱却したい
・書く瞑想(デイリー・ジャーナリング)
・書く片づけ(マンスリー・ジャーナリング)
・【ワーク1】心と生活は「インパクト図」から改善をつかむ
・【ワーク2】「価値観マップ」で内側の地図を明確にする
・【ワーク3】価値観を投影した「理想のビジョン」を書く
・【ワーク4】大切なことを実現する「行動リスト」を書く
・【ワーク5】時間軸で「習慣化プラン」を書く
第6章 習慣にすると、進化する──思考・行動・感情を統合させる
・自己対話と行動を循環させて習慣にする
・書く習慣の5つの進化プロセス
・「書く習慣化」を実践するクウォーター・ジャーナリング
・目的に合わせた習慣化実践ガイド
・書くためのノートとペン
・習慣化のプロが教える、続ける3つのコツ
・もうテクニックはいらない! 必要なのは自分の心と向き合う時間
おわりに
巻末付録 感情ジャーナル完全ガイド