そもそも人間は、相手の話を「聴く」つもりでいないと、100聞いたうちの75くらいは捨ててしまうのだそうです。まるで、目の粗いザルでサラサラの砂をすくっているようなもの。例えば奥様と話をしていて、「あなた、ちゃんと聞いてる?」と言われた経験がある男性諸氏も多いことと思います。

 余談ですが、NHKのアナウンサーは、視聴者がHearの状態で聞いていることを想定して、緊急時以外はニュースを若干ゆっくりと読むのだと聞いたことがあります。緊急ニュースのときは、ピロロ、ピロロとニュース速報であることを知らせて視聴者が集中して聞こうとする状態で話しますから、速度を上げてニュースを読んでも大丈夫なのだと聞いたことがあります。

 それほど、人間はボ~ッとして聞き流していることが多いということです。

 もちろん、耳に入ることのすべてを記憶していたら、あっという間に脳がパンクしてしまうので、情報を取捨選択することや忘れることは非常に大切です。

 ただ、部下と話をしているときは、Listenのスイッチをオンにしてもらいたい。

 コーチングで言うところの「アクティブリスニング(能動的傾聴)」の状態になっていただきたいのです。

Listen全開で真剣に聞けば
その姿勢は部下にも必ず伝わる

 私がかつてコーチングを学んだとき、この「聞く姿勢」について、次のような表現で説明を受けたことがあります。

「Listenは、相手の心のなかにある氷山の『海に隠れた下の部分』を引き出すつもりで聞く」

「Listenは、相手が『このことは墓場まで持っていこう』と思っている言葉を引き出すつもりで聞く」

 Listenは、それくらい真剣な姿勢で臨みなさいということです。

 もちろんこれは、コーチにおける傾聴の心得ですから、一般企業の上司は、そこまで気合いを入れなくてもよいとは思いますが、ご参考までに。

 いずれにしても、部下に対してHearではなくListen状態で聞けば、当然、入ってくる情報量が増えます。

 そして、聞いている上司がListen全開で真剣に聞いてくれていれば、その姿勢は部下にも必ず伝わります。すると、話すことが気持ちよくなって、つい本音までしゃべってしまうようになるのです。