『ヤフーの1on1 部下を成長させるコミュニケーションの技法』(本間浩輔著/ダイヤモンド社刊)が、2017年の発売以来、ロングセラーを続けています。ヤフー株式会社で一貫して“1on1”に携わり、『1on1ミーティング 「対話の質」が組織の強さを決める』(ダイヤモンド社刊)の共著者である吉澤幸太氏(ヤフー株式会社 ピープル・デベロップメント統括本部 ビジネスパートナーPD本部)が、企業文化に育てていったポイントと、リモートワーク環境下でどのように機能しているのかについて、最新の社内調査もまじえて解説します。(ダイヤモンド社 人材開発編集部)
数ある人事施策のうち、1on1が残った理由は…
1on1ミーティング(以下、1on1)は、今でこそ広く知られていますが、2012年4月に新執行体制発足とともにスタートした数ある施策のうちの一つでした。当時、ヤフー株式会社(以下、ヤフー)では、「人財開発企業になる」ことを標榜し、「社員の才能と情熱を解き放つ」「管理職の定義を変える」「上司の仕事は部下が活躍する舞台をつくること」などといった経営メッセージが出され、人事改革が始まりました。
人事本部(のちにピープル・デベロップメント本部に改称)は当時、1年間に50を超える施策に取り組みました。計算上は週1本ペースで新施策を打ち出したことになります。当時としては施策数に数値目標があったわけではありませんでしたが、できることをやっていこうという試行錯誤を繰り返していたら、結果として数々の取り組みを行っていたというわけです。
ここで学んだのは、経営や人事がいくら強いメッセージを出しても、現場がその効果を実感できなければ実践されることはなく、すたれていってしまうということでした。1on1が残ったのは、現場での効果実感があったからであり、そこに習慣化するための後押しをしていったことが功を奏したと考えています。
この約5年に及ぶトライアル&エラーをまとめたのが、『ヤフーの1on1 部下を成長させるコミュニケーションの技法』(ダイヤモンド社刊)です。12年当時のヤフーでは多くの社員が「1on1って何?」という状態でした。そこからどのように導入・浸透させていったのか、その背景にはどんな考え方があったのかを紹介させていただきました。すると想定をはるかに超える反響があり、制作チームにとってはたいへん嬉しい驚きでした。