旅行中の天気保険が途中で売買できたら?
その天気保険は、雨が降った場合、1万円の旅行代金が購入者に全額キャッシュバックされる仕組みであった。
ここで、第三者もキャッシュバックが受けられるように、その保険契約の内容を変更して、誰でも取引ができるように工夫してみよう。つまり、天気保険の保険証書の持ち主が、別の旅行者が参加する旅行で雨が降った場合に、1万円のキャッシュバックを受ける権利を保有することにするのである。旅行者が旅行会社で申し込んだ時点では、その保険証書の保有者が旅行者であることは間違いないが、それをその後第三者に売却できるようにするという工夫である。
その場合、そのチケットはいくらで売買されるのが適当だろうか?旅行日が近づくにつれて大型の台風が接近しているような、確実に荒天が予想されるケースでは、チケットはほぼ1万円に近い価値を持つことになる。すると、それに見合った高値で取引されるだろう。一方、しばらく晴天が続き、雨が降る見込みがほとんどなければ、1万円を受け取れる確率は極めて低くなるため、チケットの価値はほとんど失われることになるだろう。
そのように考えると、ある出来事が発生した時に、それに応じて何らかの支払いがなされるチケットが売買されるならば、その価格はその出来事の可能性を反映しているとみなすことができる。したがって、その価格には、取引に参加した様々な人々の考えが反映されており、いわば参加者の総意が集約されていると考えることもできる。そのようなたくさんの人々の考えを集約して、何らかの値を導くという性質によって、予測市場はしばしば「集合知」の一つであるされる。