「仕事がおもしろくない」「上司にうんざり」「もう会社を辞めたい!」
そんな思いが少しでもあるなら参考にしたいのが、92歳にして、現役総務課長としてバリバリ働いている玉置泰子さんの著書
『92歳 総務課長の教え』だ。
ベストセラー作家・本田健氏も絶賛する泰子さんの教えは、新入社員からベテラン社員まで即役立つ、説得力あふれる教訓が満載。壁を超えたら人生で一番幸せな20年が待っていると説く『80歳の壁』が話題になっている今、「世界最高齢の総務部員」としてギネス世界記録に認定された泰子さんが教えてくれる、長く幸せに働く63の秘訣は必読である。

※本稿は、『92歳 総務課長の教え』より一部を抜粋・編集したものです。

【92歳の現役総務課長が教える】何歳になっても失わない心の問題鳴田小夜子(KOGUMA OFFICE)

「何か工夫できることはないか」という意識の大切さ

【92歳の現役総務課長が教える】何歳になっても失わない心の問題玉置泰子(たまき・やすこ)
1930(昭和5)年5月15日生まれ。商業高校を卒業後、25歳で三興鋲螺(現・サンコーインダストリー)に入社。以来66年にわたり、経理や庶務の業務を担ってきた。現会長より11歳年上で勤続年数も長いことから、同社の歴史を知る語り部として新人研修の担当もしている。2020年11月「世界最高齢の総務部員」としてギネス世界記録に認定される。2022年5月、初の著書『92歳 総務課長の教え』を上梓すると、3週連続で増刷を重ねるなど大反響となる。

私の会社には、現状に甘んじることなく、ワンランク上を目指して挑戦し続ける社風があります。社長自身が、その体現者です。出荷管理のシステム改良に挑んで、SE(システムエンジニア)と協力して、自社独自のプログラムをつくってしまいました。このプログラムで、特許も取得しています。

経営トップがこの調子ですから、社員も「何か工夫できることはないか」という意識が高いのです。何度も触れているTQC(全社的品質管理)活動が、その実践の場となっています。

うちは商社ですから、仕入先のメーカーから製品を受けとり、それを販売先のユーザーに向けて出荷するのが、基本的な仕事の流れとなっています。社長がつくったのは出荷管理のプログラムですが、仕入先メーカーからの入荷管理のプログラムは、その担当社員たちと長年おつき合いのある株式会社オーシーシー情報センターという会社が一丸となって設計開発したものを以前から使っています。

このプログラムは、現場を熟知している社員たちが、使い勝手をよりよくするため、いまでも独自に改良を重ねて日々進化を続けています。

着実にワンランク上を目指す

私が大切だと思うのは、背伸びをしてツーランク上、スリーランク上を一気に目指さないこと。高すぎる目標を立ててしまうと、少しチャレンジしてダメだと「やっぱり無理だ」と早々に諦めてしまいがちです。

挫折すると失敗体験として心に刻まれてしまいますから、その後チャレンジしようとする意欲が削がれる恐れもあります。ですから、現状のワンランク上を目指すというのが、身の丈に合うちょうどいい目標設定だと思っています。

階段は1段ずつ確実に上るもの。ワンランク上を目指していたら、いつの間にかツーランク、スリーランク上に立てているものです。1段飛ばし、2段飛ばしで階段を上ろうとすると、転落して痛い思いをする恐れだってあります。

カエルの姿に学ぶ上を志す気持ち

私が思い出すのは平安時代の能書家・小野道風が、柳の枝に跳び移ろうとするカエルの姿に励まされるという逸話です。子どもの頃、学校の道徳の時間に教わったお話です。日本流の書道の基礎をつくったとされる小野道風も、自分の才能に疑問を感じて悩む日々もあったそうです。

そんなある日、雨の日に散歩に出た小野道風は、垂れ下がった柳の枝に跳び移ろうと悪戦苦闘しているカエルに出合います。諦めないで挑戦し続けた結果、風が吹いて枝が近づいた瞬間をとらえて跳び移ったカエルの姿を目の当たりにして、もっと上を志す気持ちを新たにしたそうです。

このカエルだって、柳の枝がそこそこ低いところまで垂れてきたからこそ、跳び移ることに成功したのでしょう。もっともっと高い枝に跳び移ろうと、いわばツーランクもスリーランクも上に行こうとしたら、おそらく失敗に終わったはずです。やはり、着実にワンランク上を目指す姿勢が大切なのです。

※本稿は、『92歳 総務課長の教え』より一部を抜粋・編集したものです。