米国民は新型コロナウイルス禍初期の2年間に多額の貯蓄を積み上げたが、今はそれに手を付け始めている。ムーディーズ・アナリティックスによると、コロナ流行が始まった時期から2021年末までの間に、米家計は2兆7000億ドル(約365兆円)の超過貯蓄を積み上げた。感染対策のロックダウン(封鎖措置)によって外出できなくなり、お金の使いようがなかった。さらに、景気対策として3回実施された現金給付により、収入が押し上げられた。それが今では、数十年ぶりの高インフレに賃金上昇率が追い付かず、米国民は貯蓄を取り崩して出費を賄っている。米商務省経済分析局によると、個人貯蓄率(可処分所得から支出を差し引いた金額が、可処分所得に占める割合)は5月に5.4%に達した。これは過去10年間の平均を下回る。過去最高となった2020年4月の34%との差は歴然だ。政府統計を分析したムーディーズ・アナリティックスによれば、家計はこれまでに「コロナ貯蓄」を約1140億ドル取り崩した。