「原材料高」「供給網混乱」「侵攻長期化」……経営者の悩みは尽きない。
人気YouTuber公認会計士でミリオンセラー作家の山田真哉氏は、「コロナ禍明けに売上! 売上! と社員を急き立てる経営者は危ない…」と、意味深な“売上中毒・危険警報”を発する。
そんな山田氏が「このレベルの本はまず出てこない。20年に一冊の本。読まない理由がない。」と断言する本がある。『売上最小化、利益最大化の法則──利益率29%経営の秘密』(木下勝寿著)だ。
著者の木下氏は、たった一人で起業→詐欺にあって無一文→史上初の4年連続上場→現在東証プライム上場社長兼現役マーケッターとしてD2Cの最前線で活躍。SNSでは木下氏の言葉が多くの共感を集めている。「2021年 スタートアップ・ベンチャー業界人が選ぶビジネス書大賞」を受賞した木下社長処女作の魅力とは何か。山田氏に聞いた。

【ミリオンセラー会計士が明かす】なぜ「お金の余裕は心の余裕」ですべてうまくいくのか?Photo: Adobe Stock

僕の座右の銘

【ミリオンセラー会計士が明かす】なぜ「お金の余裕は心の余裕」ですべてうまくいくのか?山田真哉(Shinya Yamada)
公認会計士・税理士。芸能文化税理士法人会長、株式会社ブシロード社外監査役
著書『女子大生会計士の事件簿』(角川文庫他)はシリーズ100万部、『さおだけ屋はなぜ潰れないのか?』(光文社)は160万部を突破、YouTubeは登録者数40万人を超える。
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 前回「多産多死」から「少産少死」の経営へという記事を配信しました。

 今回は、僕の座右の銘お金の余裕は心の余裕」という話をしましょう。

売上最小化、利益最大化の法則』の著者・木下勝寿社長が経営する「北の達人コーポレーション」では、商品の数を追わずに数を絞り込んで、じっくりコトコト時間をかけて品質をつくり込んでいきます。

 会計士的には、他の会社が点数主義、売上主義に走るところを、どうやってその真逆の、一点主義、利益主義を貫けるかという点に興味があります。

 おそらくその答えは、現金が豊富にあるからと推察されます。

 キャッシュが潤沢だからこそ、仮に1、2年くらい、新商品が全く出なくても、商品開発に時間をかけられるのではないかと思うのです。

 これは以前、この連載でも触れた「無収入寿命」の話につながってきます。

 無収入寿命とは、売上ゼロになっても経営の現状維持ができる期間を指す、木下社長の造語です。

 あまり発表したことがないのですが、僕の座右の銘は、

お金の余裕は心の余裕」です。

 この本を読んでいると、

 どの業界でも大事なことが端的にわかります。

時間と執拗な手間をかけて新商品をつくる
◎「売上教」を卒業し、「利益教」に入る
◎「無収入寿命」を計算し、「演歌の戦略」で目立たない戦略を愚直に実行する

松下幸之助の「ダム経営」と利益の話

 古くは松下幸之助の「ダム経営」の話が有名ですよね。

 この本にも、こうあります(P31)。

「好景気だからといって、流れのままに経営するのではなく、景気が悪くなったときに備えて資金を蓄える。ダムが水を貯め、流量を安定させるような経営をすべきだ」(1965年2月の講演)

 聴衆の一人が、

「ダム経営の大切さはわかるが、そのやり方がわからないから困っているんですよ」

 と尋ねた。松下氏は、

「まず、ダムをつくろうと思わんとあきまへんなあ」

 と答えた。聴衆は落胆したり、顔を見合わせて苦笑したりした。

 しかし、「これをやったから松下は大企業になったのだ」と気づき、実践した人がいた。

 京セラ、第二電電(KDDI)を創業し、日本航空の経営を再建した、あの稲盛和夫氏だった。

 木下社長が考えていることは、これと同じです。

まず、どの会社も、社長自身が売上よりも利益を出そう! 現金を貯めよう! と号令をかけないと絶対に貯まらないんです。

 まずは、社長が、幹部が、管理職が利益が大事だと心底思い、それを社員やパート・アルバイトの方々にまで伝えていくのが大事です。

 売上より利益が大事!

 すべてはそこからスタートします。

「利益教」の教えは少し面倒かもしれません。

 でも、面倒なことをやり続けた人だけが、まだ見ぬ景色を観れるのです。

 まだこの本を読んでいない方は、今すぐ買って読んでみてください。