赤と白のアクセントはインテリアにも生かされていますが、ステッチについては白ではなく「ペブルグレー」の糸が用いられ、黒革の素材とよくなじむように工夫の跡が見られます。とは言え、これはより繊細な仕上げを望む顧客に対してのみ提供されるオプションに過ぎません。

PORSCHEPORSCHE
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 ドアシル(編集注:ドアの下に位置する敷居部分のこと)は、「1952-1992-2022-70 Years America Roadster」と記されたプレートで飾られています。「1992?」と思った人もいるかもしれません。実はこの年に、「964」の限定モデルとしてワイドボディの「911カレラ2カブリオレ」を生産したポルシェは、「アメリカ・ロードスター」の呼称を復活させているのです。約250台が製造されましたが、当時の空冷仕様の「911」がもてはやされる昨今においても特に知名度が高い1台とは言えません。

 今回の「911カレラGTSカブリオレ・アメリカ」には、「964アメリカ・ロードスター」の系譜と呼ぶべき具体的なディテールこそ見受けられないものの、その精神性には確かに通ずるものがあります。いずれの車も基本的には少量生産、そしてオープントップの「911カレラ」のアップグレードと捉えることができるからです。