「分散型金融」で便益享受とリスク低減を両立するには?金融庁の専門家が着目するヒントPhoto:PIXTA
*本記事はきんざいOnlineからの転載です。

 本連載では、分散型金融のもたらすイノベーションの可能性とリスクについて、当局者としての視点も織り交ぜつつ、リレー解説を行っている。今回は、これまで議論してきたDeFiの特徴やリスクなどを踏まえ、規制上の論点を俯瞰した上でステークホルダー間の協力を通じてリスクに対応していく考え方について論じたい。

両立が求められる
便益享受とリスク低減

 第2回でも論じたが、現状、分散型金融の大多数は完全な分散型にはなっておらず、今後も中央集権的な要素が残り続けるのかは現時点では予想が難しい。ただし、仮に分散化がより進んでいく場合、これまでのような中央集権的な仲介者を規制するという方法では規制目的を達成することが難しくなることが懸念される。

 分散型金融システムの多くがその基礎とするパブリック型のブロックチェーンは、その仕組み上、特別な管理者がいないことが特徴となっており、自律的に稼働することが可能である。従って、仮に規制でブロックチェーンの利用を禁止したとしても、ユーザーがいる限り強制的にサービスを停止することは難しい。同時に、一度ブロックに取引が記録されるとネットワーク参加者の合意がない限りは修正や削除をすることができず、仮に問題が生じたとしても、事後的に記録を書き換えて取引を巻き戻すことが難しい。