UST価格暴落の規制監督上の課題とは?金融庁の専門家が解説Photo:PIXTA
*本記事はきんざいOnlineからの転載です。

 今回は、前回紹介した金融安定理事会の報告書の内容を踏まえつつ、最近のテラUSD(UST)の価格下落に伴う暗号資産市場の動向について、規制監督上の観点から考えてみたい。なお、本稿の内容はあくまでも現時点で入手できた情報をもとにしている点にご留意いただきたい。

5月9日前後を境に
USTの価格が暴落

 USTは法定通貨や暗号資産等の担保を用いず、アルゴリズムがUSTの供給量をコントロールすることで、1USTを1米ドルに連動させることを目指したステーブルコインであった。具体的には、UST価格が1米ドルを上回る場合はUSTの供給量を増加させ(UST価格は低下)、逆に1米ドルを下回る場合はUSTの供給量を減少させる(UST価格は上昇)ようにアルゴリズムが組まれていた。これを行うため、LUNAという価格が変動するトークンを用意し、常に1USTを1米ドル分のLUNAと交換可能にすることで、投資家に裁定取引のインセンティブを与えていた(次ページ図表)。最近では、さらなる価格安定のため、大量のビットコイン(BTC)を購入したことも報道されている。