開成、麻布、桜蔭、雙葉、筑駒、渋幕……東京・吉祥寺の進学塾VAMOSは、「入塾テストなし・先着順」で生徒を選抜しないが、「普通の子ども」を有名難関校に続々と合格させると話題の塾だ。子どもの特徴を最大限に生かして学力を伸ばす「ロジカルで科学的な学習法」が、圧倒的な支持を集めている。本稿では、VAMOSの代表である富永雄輔氏の最新刊『ひとりっ子の学力の伸ばし方』(ダイヤモンド社)から、特別に一部を抜粋して紹介する。
マイペースになりがちなひとりっ子
私はこれまで多くの子どもたちを指導してきましたが、「ひとりっ子は甘えん坊でわがまま」というステレオタイプな感想を持ったことはありません。
ただし、ひとりっ子が「マイペース」であることは事実です。比較対象がない親は気づきにくいかもしれませんが、塾で大勢の子どもを見ているとよくわかります。
ひとりっ子は、良い意味でも悪い意味でも一人に慣れており、時間の使い方も自分優先です。マラソンで言えば、まわりの選手のペースを気にせず、自分のペースで走りたがります。
家において、子どもという存在が自分しかいないのだから、それは当然のことでしょう。
オンライン学習が「マイペースな子ども」を後押し
そして、最近とみに増えてきたタブレットを用いての学習やオンライン授業は、マイペースなひとりっ子の追い風となっています。
言うまでもなく、タブレット、スマホ、パソコンといった機器を用いれば、紙の教材では得られない、よりリアルな資料に接することができます。
それは、小学生の子どもにとってワクワクするもので、学習への大きなモチベーションとなります。
また、オンライン授業は、あとからわからない箇所を繰り返し見られるなど、非常にポジティブな面が多々あり、上手く使いこなせれば学力を大きく伸ばすことができます。
とくに、英語などの語学学習においては、オンラインの優位性は明らかです。
こうしたことから、学習現場におけるタブレットやオンラインの活用は、コロナ収束後もさまざまな形で続き、さらに拡大していくでしょう。
「兄弟姉妹の制限」がない
では、そうした時代になぜ、ひとりっ子が有利なのか。
そもそも、マイペースなひとりっ子にとって、周囲に誰もおらずに一人で学ぶということは、まったく苦になりません。
学習パターンをつかんでしまえば、あとは一人でそれをどんどん進めることができます。
それに、子どもが自由に使える「機材と場所」という現実的な問題があります。ひとりっ子ならば、親が用意してくれたタブレットをいつでも好きなように使えます。
しかし、兄弟姉妹がいれば、譲り合いが必要となります。もし、すべての子どもたちに一台ずつタブレットがあったとしても、今度はそれを使いこなす「空間」が限られます。
親である読者のみなさんも、コロナ禍でリモートワークを経験したはずです。移動時間が節約できるという便利さがある一方、落ち着いて仕事に集中できる場所を確保するのに苦労したのではないでしょうか。
日本の住宅事情では、自分の書斎を持っているケースなど、かなり少ないはずですから。
このことは、そのまま子どもたちにもあてはまります。複数の子どもがいる家庭でオンライン授業を受けるとき、それぞれがどこでやればいいでしょうか。
今はリビング学習が増えていますが、全員がそこに集まってしまったら、とても集中できません。かといって、子ども部屋でやらせてみたら、兄弟姉妹で茶々を入れ合って、さらにカオスとなりかねません。
その点、ひとりっ子だったら、リビングでも自室でも、ゆったりと集中して授業を受けられます。
さらには、ひとりっ子なら親のフォローも充分に受けられます。
高校生くらいになれば、すでにスマホを使いこなしていることからタブレットもなじみやすいのですが、小学生にはまだまだ難しい。なかなか使いこなせずに、途中で音声が切れてしまうなど、授業の内容をしっかり把握できないということも起きます。
そんなときも、ひとりっ子であれば、親が丁寧に教えてあげられます。
(本稿は、『ひとりっ子の学力の伸ばし方』からの抜粋・編集したものです)