マンディープ・マンク氏(38)は2020年暮れ、大規模な逆張り戦略を仕掛けていた。マンク氏のヘッジファンド、コルトレーン・アセット・マネジメントはすでに、新型コロナウイルス感染拡大を受けた相場の急落で大きな痛手を負っていた。そのタイミングで、マンク氏は割安な欧州株を重視する従来の戦略から、ハイテク株を中心とする米国のグロース株を空売りする戦略に切り替えることを決めた。あまりに多くの銘柄の株価売上高倍率が10倍を超え、市場の熱狂が一握りの業種に集中している状況は「必ず投資家に悪い結果をもたらす」。コルトレーンは2020年9月のプレゼンテーションで顧客にこう説明した。マンク氏にとっても、もう少しで悪い結果で終わるところだった。その後、株式市場がハイテク株主導で急ピッチの回復を遂げたことで、2020年末までにコルトレーンの空売り戦略は完全に裏目に出ていた。顧客の資金引き揚げが相次ぎ、その年の運用成績はマイナス56%に沈んだ。21年にはプラス19%まで持ち直したにもかかわらず、かつて10億ドル(約1400億円)余りに上っていた運用資産は2022年1月には2億ドル足らずまで落ち込んだ。