【「5回勝負して4回勝つ人」と「100勝負して60回勝つ人」ビジネスで優秀なのはどっち?】の広告でも話題沸騰。全国3000社が導入し、話題沸騰のマネジメント法「識学(しきがく)」の代表・安藤広大氏の最新刊『数値化の鬼』。「仕事ができる人」に共通することは、「数字で考えること」や「数値化のクセをつけること」だと言う。数字によって自分の不足を客観的に受け入れ、次の行動設定や行動変容につなげることによって、人は「急成長」する。
「数字で人を見るな」「数字がすべてではない」ということはよく言われるが、「数字」は決して無視できない存在。この本では、「感情を横に置いて、いったん数字で考える」「一瞬だけ心を鬼にして数値化する」など、頭を切り替える思考法を紹介する。

「5回勝負して4回勝つ人」と「100勝負して60回勝つ人」ビジネスで優秀なのはどっち?Photo: Adobe Stock

「働かないおじさん」の罠

 最初に質問です。

「5回勝負して4回勝った人」と「100回勝負して60回勝った人」だと、どちらがビジネスで優秀でしょうか?

 普通だと、それぞれ確率を求めると、「勝率80%」と「勝率60%」となって、前者の人のほうが優秀そうに感じます。

 しかし、注目してほしいのは、その分母である「行動量」です。

「5回勝負した」と「100回勝負した」という部分を見るべきなのです。

 割合のように「割り算」が絡むものには要注意です。

 なぜなら、確率にこだわって勝負しなくなる「働かないおじさん」を生み出してしまうからです。

 その現象について、詳しく説明してきましょう。

「失敗」が怖くなってしまう数値化のクセ

 プレーヤーである限り、とにかく数をこなすことを考えるべきです。

 そこから20代後半、30代、40代にかけて、考え方の変化がおとずれます。

 仕事には徐々に慣れていきます。すると、「今年も去年と同じことの繰り返しだな」と感じるタイミングがやってきます。

 さらに毎年、新卒などで新しく入社してくる若手が増えていきます。

 彼らの中には、「あの先輩を追い越したい」という思いがあるはずです。

 その目を気にしてしまうと、「失敗する姿を見せたくない」という感情が出てくるでしょう。

 そこでやってしまうのが、冒頭の「確率」の考えなのです。

 行動量を増やすために足し算や掛け算をしていた人が、今度は「割り算」をします。

 達成率、契約率、成功率など、「%(率)」にこだわるようになります。

 これが、非常に厄介な数値化なのです。

「確率では勝ってる」という自己評価

 10件中8件の契約を取った成約率80%の人。

 50件中25件の契約を取った成約率50%の人。

 この場合は、後者のほうが評価されなくてはいけません。

 いくら「確率では勝ってる」と言っても、8件と25件では、その差が3倍です

 こうした数値化によって安心してしまう中堅プレーヤーが、ものすごく多くいます。

 量をこなすと、次は、質にこだわるのは当然でしょう。

 そのこと自体は問題ではありません。

 しかし、「量」よりも「質」が上回り、「質を上げること」が目的になってしまうことは大問題です

 あくまで「行動量ファースト」であり、それをキープしたまま「確率も上げていく」というのが正しい順番です。

 この順番を間違えてしまうのが、「働かないおじさん」への第一歩なのです。

出世しておかないと「評論家」になってしまう

 若手の頃はたくさん量をこなしていた人が、急に数をこなすことをやめるケースがあります。

 それは、先ほども書いたように、「失敗すること」が恥ずかしくなってくるからです

 たくさん数をこなしていると、そのうち、どんな仕事でもカンどころがわかってきます。

 すると、「これは失敗するな」というアンテナが反応することが増えます。

「あれはやめたほうがいい」
「このパターンは失敗する」

 など、失敗に対する情報がより集まるようになります。

 その先に待っているのは、「評論家」です

 若手や上司のやることに対して、「どうせうまくいかない」「あのパターンはダメだ」というふうに、評論家のポジションを取るようになってしまいます。

 人間の脳は、「うまくいく可能性」より「失敗する可能性」のほうに重要度を高く認識します。

 1万円をもらえる喜びより、持っている1万円を失う痛みのほうが大きいのです

 つまり、なんとなく仕事をやっている限り、「評論家にならざるを得ない」のです。

 それを避けるために、プレーヤーは次のステージとして、出世をして管理職になります。

 教える側に立ち、部下の結果に責任を持つ代わりに、「自分の行動量」を「チームの行動量」へとシフトしていきます

 しかし、出世できなかったとしたら、どうでしょう。

「評論家のようなプレーヤー」になるしかありません。「働かないおじさん」は、こうやって生み出されるのです。

 そうならないためには、確率の誘惑に打ち勝つことです。

 確率のことばかりを考えない勇気を持ちましょう。

 プレーヤーでいる限り、あなたが何歳であっても、重要なのは「行動量」です。

安藤広大(あんどう・こうだい)
株式会社識学 代表取締役社長
1979年、大阪府生まれ。早稲田大学卒業後、株式会社NTTドコモを経て、ジェイコムホールディングス株式会社(現:ライク株式会社)のジェイコム株式会社で取締役営業副本部長等を歴任。2013年、「識学」という考え方に出合い独立。識学講師として、数々の企業の業績アップに貢献。2015年、識学を1日でも早く社会に広めるために、株式会社識学を設立。人と会社を成長させるマネジメント方法として、口コミで広がる。2019年、創業からわずか3年11ヵ月でマザーズ上場を果たす。2022年7月現在で、約3000社以上の導入実績があり、注目を集めている。最新刊『数値化の鬼』(ダイヤモンド社)の他に、36万部を突破したベストセラー『リーダーの仮面』(ダイヤモンド社)などがある。