記憶との付き合い方を工夫すれば前向きになれる

 ポジティブな気分で過ごしていると、ポジティブなできごとを記憶に刻みやすい。ネガティブな気分で過ごしていると、ネガティブなできごとを記憶に刻みやすい。

 ポジティブな気分で過去を振り返ると、ポジティブなできごとを思い出しやすい。ネガティブな気分で過去を振り返ると、ネガティブなできごとを思い出しやすい。

 ポジティブなできごとを思い出すと気分が前向きになるが、ネガティブなできごとを思い出すと気分が後ろ向きになる。

愚痴っぽい人が「どんどんネガティブ」になってしまう心理構造、改善法は?榎本博明『なぜイヤな記憶は消えないのか』(角川新書)

 このような記憶に関する気分一致効果を知っていれば、愚痴っぽい人の心理メカニズムが分かるはずだ。彼らは決して不運で恵まれない境遇にあるわけではない。日頃からネガティブな気分で過ごしているため、ネガティブな気分になじむできごとが記憶に刻まれやすく、またネガティブなできごとが記憶から引き出されやすく、後ろ向きのことばかり口にするのだ。

 ここに前向きな気分で日々を過ごすためのヒントがある。大事なのは、気分が良いときに過去を振り返り、気分の悪いとき、たとえば落ち込むようなことがあったときは決して過去を振り返らないことだ。それによって気分をポジティブに保つことができるし、ネガティブなできごとを思い出さないですむ。

 常に前向きでいられる人物は、自然にそうした記憶との付き合い方ができているのだ。