「なんとなくいつも憂うつ」「不安になりやすい」「ついがんばりすぎてしまう」……生きづらさを感じているものの、精神科や心療内科を受診したり、精神分析を受けるにはハードルが高い、と感じている人にぜひ読んでほしいのが、2022年8月3日発売の『こころの葛藤はすべて私の味方だ。 「本当の自分」を見つけて癒すフロイトの教え』(チョン・ドオン著 藤田麗子訳)だ。著者の精神科医のチョン・ドオン氏は精神科、神経科、睡眠医学の専門医として各種メディアで韓国の名医に選ばれている。この本は、フロイトの精神分析をベースに隠された自分の本心を探り、心の傷を癒すヒントをくれる。今回は日本版の刊行を記念して、本書から特別に一部抜粋・編集して紹介する。

【精神科医が教える】「絶対に失敗したくない人」が陥りがちな思考のワナとは?Photo: Adobe Stock

はじめから完璧な人はいない

人間が迷うのは、完璧にやってのけたいという気持ちがあるからです。
自分に足りない部分があるということを受け入れたくなくて、心はこう語りかけてきます。

「きみは完璧でなければならない。だから、完璧に準備が整うまで絶対に動くな」

左足が前に進もうとしても、右足が止めます。同じ場所に立ち尽くして、辺りを見回すことしかできません。
他の人々は先に進んでいくのに、自分だけ踏み出せなくて不安になります。

やきもきしながら、「準備さえ整えば、歩いているみんなを走って追い越せるはず」と自分を励まします。

ところが、ここに落とし穴があります。
歩いたり走ったりするには、まず転ぶことから学ばなければいけません。そうすれば、転んでもまた起きあがることができます。
やがていつのまにか、ほとんど転ばずに歩ける日がやってきます。

歩き始めたころのことは、なかなか思い出せませんよね。
では、よちよち歩きを始めた赤ちゃんの姿を思い浮かべてみてください。

よろめきながらなんとか数歩進み、転んで泣いて、また立ち上がって歩くという過程を、数えきれないほど繰り返した結果、転ばずに歩き、走れるようになります。

はじめから完璧だったわけではありません。
失敗から少しずつ学んで、上手な歩き方と走り方を身につけたのです。

頭の中の公式を書き換えよう

「完璧にできるようになったら行動する」という言い分は矛盾しています。
どんな矛をも通さない完璧な盾や、どんな盾をも貫く完璧な矛は存在しません。完璧でありたいという希望、幻想あるいは妄想が存在するだけです。

その気持ちは理解できます。
今までの人生において、新たなことに挑戦するたびに結果がかんばしくなかったとしたら、あらゆることに迷いを感じてしまうのは無理もありません。
「挑戦=失敗率100%」という公式が、心に刻まれていることでしょう。

ですが、この公式を「挑戦=成功の可能性50%+失敗の可能性50%+学習の機会100%」に書き換えていくことが大切なのです。