最初から完璧を求めなくていい

失敗から学びましょう。
これは自尊心が傷つく苦しい作業ですが、自分を成長させたいときのもっとも簡単な方法でもあります。

一度の失敗は単なるミスにすぎません。方向性を再設定するためのフィードバックです。
失敗からの学びは人生そのものであり、生きる過程です。
過程があってこそ、結果が生まれます。

スーパーマンのように空を飛ぶことはできなくても、階段をのぼって建物の屋上に上がれば、素敵な景色を眺めることができます。

最初から完璧を求めると、人生の重要な門出で迷ってしまい、後悔につながります。
一段も階段をのぼっていないのに絶景を見ることはできません。

迷いは必ずしも悪いものとはいえません。
迷うことが推奨される場面もあります。

時と場合によっては、早すぎる決断がトラブルを招く恐れもあり、よくない結果が出れば衝動的だったと非難されます。
必要なときは戦略的に迷わなければいけません。

社会に出たばかりの新入社員であれば、「考えが浅い」と上司に叱られて涙を流すこともあるでしょう。
そんなときは、いっそ周囲の人々のやり方をよく観察して、まねしてみましょう。
すると、どんな仕事でも平均レベルにはこなせるようになるものです。

「迷い」の分析が葛藤を発見・解消する糸口に

無意識の世界を探ると、その中にあるものを意識の上に引き上げることができます。
迷いが治療の基礎固めになることもあります。

精神分析の面接では、迷いとして表現されるアンビバレンスを通して、クライエントの内面の深い部分を探っていきます。
たとえば、クライエントがやたらと父親への愛情について語る場合、心の中には誰にも明かせない父親への憎しみが隠れていることがあります。

意識上にある愛情と、無意識の憎しみという相反する感情が共存し、父親に関する葛藤が生じている状態だといえるでしょう。
こうした葛藤の構造を分析すると、父親を穏やかに受け入れられるようになります。

アンビバレンスが、長年の葛藤を発見して解消する糸口になるのです。

(本原稿は、チョン・ドオン著 藤田麗子訳『こころの葛藤はすべて自分の味方だ。 「本当の自分」を見つけて癒すフロイトの教え』から一部抜粋・改変したものです)