良品計画と、ニトリホールディングスはいずれもSPA(製造小売)業態だが、決算書を見ると、そのビジネスの構造には違いがあることが分かる。特に「収益性」と「在庫の回転期間」に大きな差がついているのだ。その要因とは。両社の決算書を比較してみよう。(中京大学国際学部・同大学院経営学研究科教授 矢部謙介)
良品計画の決算書
コロナ禍の苦境から変化は?
今回は、雑貨や家具を取り扱うSPA(製造小売)企業の良品計画と、ニトリホールディングス(以下、ニトリHD)の決算書を比較してみたい。コロナ禍における両社の決算内容は、どのようになっているのか。また、ニトリHDが2021年1月に島忠を買収して連結子会社化(同5月に完全子会社化)したことによる業績への影響についても見ていこう。
下図は、良品計画の21年8月期の決算書を図解したものである。
貸借対照表(B/S)から見ていこう。B/Sの左側(資産サイド)で最も大きいのは、流動資産(約2690億円)だ。ここには、現預金が約1360億円計上されているほか、棚卸資産(在庫)が約1060億円計上されている。この棚卸資産の金額は、売上高の約86日分に相当する。この点については、後ほど詳しく見ていくことにする。