2015年の発売以降、今でも多くの人に読まれ続けている『ありがとうの神様』。本書は、小林正観さんの40年間に及ぶ研究のなかで、いちばん伝えたかったことをまとめた「ベスト・メッセージ集」だ。あらゆる悩みを解決する「ありがとう」の秘訣が1冊にまとめられていて、読者からの大きな反響を呼んでいる。この連載では、本書のエッセンスの一部をお伝えしていく。
人間はたいしたものではない
湖にボートを浮かべて、湖岸から向こうの岸に渡るとします。
そして、ボートをギコギコ漕いでいると、進路を妨害するボートが目の前に現れました。このまま行ったらぶつかりそうです。
「ずいぶん、ひどいことをするなあ」と思ってパッと見たら、そのボートには人が乗っていません。
人が乗っていないボートに対して、怒鳴ることはしないでしょう。迂回をするなり、そのボートをやりすごすなりして対岸に渡ります。
しかし、同じ状況でありながら、「人が乗っている」ことがわかると、怒鳴るのではないでしょうか。
無人のボートだとやりすごすことができるのに、人が乗っていると、怒りたくなってしまいます。
「なぜ、そんな怖いことをするんだ! 危ないじゃないか!」
太陽が昇ることにも、月が沈むことにも、私たちは文句を言いません。
でも、「人がしたこと」に対しては、寛容になれないときがあります。「社長や上司が、私にひどいことを言った」「子どもが言うことを聞かない」と怒ってしまうのです。
人間には、「感情的になる」「腹を立てる」「怒る」「妬む」「憎む」という「エモーショナル」な部分があって、「人間が何かことを成している。そして、私に悪意的に働きかけてきた」と思ったときに、怒鳴りたくなるわけです。
「エモーショナル(感情的になる)」を克服するひとつの方法が、「人間はたいしたものではない」と思い知ることです。
もともと人間は、たいしたものではありません。
「たいしたものである」という実態が存在しているわけではない。自分が肩に力を入れて、勘違いして、虚像をつくり出しているだけです。
「その虚像は幻で、『人間はたいしたものではない』」と思い知った瞬間に、エモーショナルは、1秒でなくなります。
詳しい説明は省きますが、人間の体は分子によって構成されています。分子を構成するものは原子で、原子を構成するものは原子核と電子です。この原子核と電子の間には、スカスカの空間しかないそうです。
私は、クルマの鍵穴を探すためのライトを持っています。これは、1.5ボルトの水銀電池が1つだけのライトですが、この弱々しい光を指先にピタリとくっつけて当てると、ぎっしり詰まっているように思っている人間の体を、赤く透かします。
どれほど偉そうに振る舞っている人でも、その人の体を構成しているのは、「量子力学」的に見れば、99・9999……%(9が23個続きます)、空間。スカスカで何にもないに等しい存在とのことです。
そんな、スカスカな人間が、「海から太陽が昇った」「月が海に沈んだ」「目の前で誰かが何かを言った」と一喜一憂し、「それが気に入らない」「なぜ、お前は俺の言うことを聞かないんだ」と文句を言うのは、申し訳ないのですが、ちゃんちゃらおかしい。
もともと人間はたいしたものではありません。そのように思うことができたら、じつは自分がラクになる。他人のためではなく、自分がいちばん得をするのです。