“シャープ依存”の末期症状
水面下で始まった下請け破綻

 シャープさんと取引している──。数年前まで優良中小企業の“証し”だった関係は、今や巨大なリスクに暗転している。

 危機に瀕する家電大手、シャープの“下請け破綻”は、すでに水面下で始まっていた──。

 今からちょうど1年前、シャープの経営危機が大きく取り沙汰される直前のこと。主要下請けメーカーだった三容真空工業(大阪府)の社内は、怒りとも、焦りともつかない雰囲気が渦巻いていた。

「アップル向けのタッチパネルの仕事を大量に発注する」

 2011年夏、そんなシャープの言葉を信じて、社運を懸けて投資した新しい生産ライン。それが半年近くたっても“空っぽ”のままだったからだ。

 同社はかつて液晶パネル向けの部材(ITO膜)製造で、世界シェア3割を占めたトップメーカーだった。液晶テレビ「AQUOS」で急成長していたシャープはまさに、お得意さまだった。

 ところが生産の海外シフトやコスト競争にさらされ、売上高はピーク(約250億円、1993年)から、02年に100億円を割り込み、1年前には10分の1以下まで激減していた。

 そんな“シャープ依存”の果てにたどり着いたのが、冒頭の大口受注の時期がずれ込んで、資金が枯渇するという悲劇だった。

「担当者は電話に出ない。面談も受けてくれない。何とか、助けてほしかった……」

 そして迎えた12年3月期決算、シャープは過去最悪の3760億円の赤字を発表。世間が大騒ぎになったころ、三容真空工業は資金ショートを引き起こして、私的整理を決めていた(現在では再建模索中)。