子どもに言わせないようにしている「NGワード」
――親子間でのコミュニケーションに悩んでいる人も多いだろうと思います。子育てのルールとして、「これはやらない」「ここは妥協しない」と気をつけていることはありますか?
カジサック:とくに意識していることとしては、二つですかね。
一つ目は、「うん、わかった」と簡単に言わせないこと。お子さんがいる方は共感してくれるんじゃないかと思うんですが、子どもって、とくに叱られたり注意されたりしているときは、「もうわかったよ」「わかってるって」と言いがちなんですよね。
――なるほど。怒られるのが嫌だから、その場から逃げたくて、理解してなくても「わかった」と言ってしまうんでしょうか。
カジサック:そうですね。だからボクは、「わかった」と子どもが逃げようとしたら、「どういうふうにわかったの?」と問いかけるようにしています。それで、子どもが「こういう理由で、こういうふうにしていたのがよくなかったと思う」と自分の言葉で話すのをじっくり聞いてから、「そうだね。その通りだよ」と肯定する。もし、納得していないところがあるようなら、もっと深掘りして説明する。その繰り返しですね。
子どもの自尊心を奪わないために「絶対にしてはいけない叱り方」
カジサック:そして二つ目は、「他の子どもたちの前で叱らないこと」。「叱り方」については、本にも詳しく書いたんですが、ボク、全員同じ叱り方をしないんですよ。いま、子どもが5人いて、一番下の子はまだ赤ちゃんなので別として、上の4人は、全員違う叱り方をしています。その子の本質的な性格をわかっていないと、いくら叱っても心に響かないと思うんですよ。自分の考え方を押し付けるんじゃなくて、それぞれの子に合った伝え方にする。
――叱り方を変えると、たとえば「あの子にはあんなに甘いのに、どうして自分ばっかり怒られるの?」というように、いじけちゃったりすることはありませんか?
はい、その可能性も考えて、「他の子どもたちの前で叱らない」と決めているんです。叱るときは必ず、ボクの部屋に連れていくんですよ。たとえば、ご飯を食べている最中に、一人が悪いことをした。これはちょっと見逃しちゃいけないなと思ったら、「ちょっとおいで」と言って、一度席を離れさせるんです。もちろん、何か危ないものを触ろうとしているとかね、緊急性の高いことなら、周りに人がいてもその場で「ダメ!」と叱ることもありますけど、そうじゃない場合は、なるべく一対一で膝を突き合わせて話し合えるようにしています。
――大勢の前で叱れるのは大人でも居心地が悪いですもんね。子どもならなおさら、しっかり一対一で向き合ってもらえたら安心感があると思います。
カジサック:うん。みんなの前で怒られるのは嫌だろうし、伝わりづらいと思うんですよ。その「嫌だ」っていう気持ちがあるかぎり、話半分で聞くと思うんですよね。
一つ目の「わかったと言わせない」というルールとも繋がりますが、だからこそ、物心つく前から、子どもたちが親に対して、パパに対してちゃんと話ができる環境づくりは大事だなと思い、実践しています。
――悪いことをしたあとは、どのようにフォローしていますか?
カジサック:基本的には、「パパが怒って、ママがフォローする」というのがうちのやり方で、この方針は、夫婦で話し合って決めました。子育ての負担は嫁に重くのしかかっていて、一人でいちいち叱っていたら疲れてしまう。なので、基本的に「叱る役はパパ」と決めています。ボクが厳しく叱り、そのあと、子どもが落ち込みすぎないように、嫁がフォローし、逃げ道をつくる。
――なるほど。今回のお話を伺っていて、「対話」を本当に大切にされているんだなあと、驚きました。
カジサック:そうですね。お話しした、「わかったと言わせない」「みんなの前で叱らず、個別に叱り、納得してもらう」という方針を守るためにも、「対話」はとても大事だと思います。子どもが5人いるからこそ、それぞれに「パパと2人の時間」をつくるようにしています。とくに5歳くらいまでは、お風呂の時間を活用していました。「お風呂から上がるまでは、パパじゃなくて友達だからね」と言い、嫌なことやモヤモヤしていることがあれば、そのときに話してもらう。「友達」という言葉があると、子どももスイッチの切り替えができ、話しやすい場ができる。
ボクたち夫婦も日々、試行錯誤しながら子育てに取り組んでいますが、どんな家庭でも、「この家に育ってよかったな」と、大人になったときに思えるなら、それが正解。ボクらの家が、子どもたちにとってそんな場所になっていてほしい。これから反抗期が来たり、高校生になったり、成長するにつれてまた新たな悩みも出てくるかもしれませんが、その都度向き合い、家族のためにできることをやっていきたいですね。
【大好評連載】
第1回 「いくら努力しても報われない環境」から抜け出すたった一つの方法
第2回 【カジサックが明かす】初対面でもつい心を開いてしまう「3つの聞き方」
1980年大阪府岸和田市生まれ。漫才コンビ・キングコングのボケ担当。相方は西野亮廣。吉本興業所属。
「カジサック」として2018年10月1日Youtuberデビュー。
カジサックの部屋に様々なジャンルのゲストの方を招きながら、バラエティに富んだ動画を配信している。登録者は200万人を超える人気YouTuber。