最初は5月21日の鹿島アントラーズ戦の試合前で、約60人のサポーターが埼玉スタジアムの北車両門付近に集結し、浦和のチームバスの到着前後に約10分間にわたって声を出して応援した件だ。一部サポーターは、ガイドラインで求められるマスクを着用していなかった。

 次は7月2日のガンバ大阪戦の試合終了間際で、敵地・パナソニックスタジアム吹田のゴール裏ビジター席上層階において、少なくとも100人のサポーターが約5分間にわたって声を出して応援し続けた。このときも一部はマスクを着用していなかった。

 鹿島戦前の事案を受けて、Jリーグ側は浦和に対してヒアリングの実施を打診した。しかし、浦和が応じないままガンバ戦の事案が起こった。野々村チェアマンはこう語る。

「現場担当者の間でコミュニケーションを取りながら、こちらから『ステートメントを出してクラブのスタンスを明確にすべきだ』とか、あるいは『再発防止策をしっかりと明示してサポーターへ訴えるべきだ』と再三にわたって伝えてきたんですけど」

 Jリーグ規約の第141条は、チェアマンが制裁を科せる個人の範囲を「選手、監督、コーチ、役員その他関係者」と定めている。リーグ側がサポーターを直接処分できない代わりに、第51条では「Jクラブの責任」を五つの項目にわたって明記している。

 鹿島戦前の事案は第51条第1項の「観客にホームスタジアムおよびその周辺において秩序ある適切な態度を保持させる義務」に、ガンバ戦の事案は同第4項の「試合の前後および試合中において、ビジタークラブのサポーターに秩序ある適切な態度を保持させる義務」に違反していた。

 Jリーグ規約はさらに第142条で、リーグがJクラブに科す制裁措置を10段階にわたって定めている。今回は浦和に対して最も軽いけん責と2番目の制裁金が併科された。

制裁金2000万円
クラブ経営にも大打撃

 制裁金の金額は規約第152条で違反ごとに細かく定められていて、問題視された第51条第1項と第4項に違反した場合は「2000万円以下」となっている。上限の金額を浦和に科した理由を、Jリーグは7月26日の理事会後に発表したリリースの中でこう説明している。

「浦和レッズに対するサポーターの行為に起因する懲罰事案は、複数回に及んでおり看過できないものとなっている。(中略)短期間のうちに少なくとも複数回にわたり秩序を損なう行為を阻止できなかったことは重く受け止めざるを得ない」

 Jリーグは昨年2月にも、浦和にけん責および制裁金300万円を科している。2020年10月31日の大分トリニータ戦(昭和電工ドーム大分)で一部サポーターが大声を出し、指笛を鳴らした行為がガイドライン違反と認定された。再び繰り返された今回は、制裁金の金額がはね上がった。

 2000万円の制裁金は、Jリーグが科した懲罰では歴代最高額に並ぶものだ。