「Jリーグ史上初の厳罰」が鈴鹿に下った当然の理由、所属のキングカズも災難鈴鹿ポイントゲッターズの三浦泰年監督(左)と三浦知良(右) 写真提供:鈴鹿ポイントゲッターズ

今シーズンから55歳のレジェンド、FW三浦知良が所属する日本フットボールリーグ(JFL)の鈴鹿ポイントゲッターズに前例のない厳罰が下された。来シーズンのJ3昇格への必須条件となる「Jリーグ百年構想クラブ」資格が、6月28日のJリーグ理事会で剥奪されたのだ。元幹部による過去の八百長行為指示の代償として鈴鹿の目標が消滅し、結果的にカズのブランド力も傷つけられてしまった。この背景を、鈴鹿とJリーグの双方が見せてきた言動から探った。(ノンフィクションライター 藤江直人)

キングカズ所属の鈴鹿に厳罰
Jリーグ昇格のための資格を剥奪

 日本サッカー界で前例のない厳罰が下された。Jリーグへ昇格するために必要な資格の剥奪。対象となったのは今シーズンから55歳のレジェンド、カズが所属する鈴鹿ポイントゲッターズだった。

 Jリーグは6月28日に開催した理事会で、鈴鹿に付与していた「Jリーグ百年構想クラブ」の資格剥奪を決めた。会見に臨んだ野々村芳和チェアマンは、鈴鹿に対して厳しく言及した。

「そもそも端を発した案件で言えば、八百長を企てたということ。改めてですけど、Jリーグとしては絶対にあり得ないということです」

 Jリーグ入りするためのロードマップを説明すれば、47都道府県のリーグから全国を九つのブロックに分けた地域リーグ、そしてアマチュアも混在するJFLへと勝ち上がっていく。

 その過程で百年構想クラブの資格を取得し、JFLに昇格してからはJ3のクラブライセンスを申請。承認を受けた上でその年のJFLで4位以内、かつ百年構想クラブ内で2位以内に入る。

 ピッチ内外の条件をすべて満たして、初めて翌年からJ3リーグへ昇格できる。一連のプロセスで大前提となる百年構想クラブ資格が剥奪されるのは、制度が導入された2013年以降で初めてだ。

 J3リーグの創設に伴い、それまでの準加盟クラブから名称が改められた百年構想クラブ資格が認定されたケースは「23」を数える。そのうち7クラブがJリーグ昇格を果たしている。

 一方で脱退したのは鈴鹿で3クラブ目となる。19年7月のtonan前橋、20年7月の東京武蔵野シティFC(現東京武蔵野ユナイテッドFC)の脱退理由はいずれも任意だった。

 また、百年構想クラブに名を連ね、今シーズンのJFLを戦っている奈良クラブは20年1月に、解除条件付きで百年構想クラブの失格処分が下されている。ホームゲームの入場者数を5年間にわたって水増し偽証していた行為がとがめられたためだが、処分自体は同年6月に解除された。

 解除した理由として、Jリーグ理事会はガバナンス強化、入場者数のカウント方法の改善、ステークホルダーからの信頼回復――の3点が実効的に機能し、実践されていると判断した。

Jリーグが鈴鹿に厳罰を下した理由
「Jリーグの目的に反する行為」とは

 奈良クラブの例と比較すれば、鈴鹿に厳罰が下された理由がよく分かる。Jリーグは今年2月の理事会で、解除条件付きで鈴鹿に付与していた百年構想クラブ資格を停止していたからだ。