世の中のさまざまなしがらみから抜け出して「幸せな人生」を歩むために必要なものはなんだろう?
それは、「自信」だ。『幸せな自信の育て方 フランスの高校生が熱狂する「自分を好きになる」授業』(シャルル・ぺパン著、児島修訳)では、フランスの高校生から大絶賛される哲学教師が、「本当の自信の育て方」を教えてくれる。本書からその一部を特別に紹介しよう。
「自分の心の声を聞く方法」を知る
自分の内なる声に耳を傾けるのは決して簡単ではない。まず、世間一般の常識を疑いもせずに受け入れるのをやめなければならない。こうした常識が世間の慣習に由来するものなら、それを疑ってみよう。世の中の常識を頑なに信じていると、それを信じている理由を疑いにくくなる。
他者の意見を聞こうとせず、「ここではこれまでずっとこのやり方に従ってきたから」と言い張っていると、自分の心の声を聞く機会も逃してしまう。その結果、自分自身の判断を信頼しにくくなる。
大切なものは自分の外側にあると考え、自分の内側から湧き上がってくる考えや感情に信憑性があると思えなくなるのだ。常識の正しさが科学によって裏付けられていたとしても、私たちはその仕組みを理解したいと思うはずだ。
自分自身の声を聞く方法を知るというのは、自分の頭で考えて知識を血肉化することであり、物事を疑う精神を忘れないことなのだ。
「緊急性」と「重要性」を区別する
自分の声を聞く方法を知るのは、焦燥感に負けないことでもある。
私たちは誰でも、焦る気持ちがどんなふうに起こるかを知っている。時間がない、遅刻が怖い、ストレスが多い、といった状況になると、とたんに我を忘れて、バタバタとしてしまう。自分を急がせている何かや、大きな声で指示を出す人にただ従い、自分自身を見失う。このような状態になると、自分の内なる声に耳を澄ますことはできなくなる。
こうした焦燥感から身を守るための良い方法は、「緊急性」と「重要性」を区別することだ。
私たちは普段の生活の中で、緊急に何かをしなければならないことが多い。だが、そのすべてが重要であるわけではない。この区別を念頭に置くことで、気が楽になるし、限られた時間の中で大切なことに集中しやすくなる。
仕事で自分に投げかけるべき1つの質問
職場では、常に時間的なプレッシャーにさらされ、判断力に自信を失ってしまいがちだ。だが、絶え間なく押し寄せる要求の洪水には、「これは本当に重要なことなのか?」というシンプルな疑問を投げかけることで対抗できる。
仕事で本当に重要なのは、自分の役割で求められている業務を、しっかりと成し遂げることだ。このことを忘れないようにすれば、同僚や上司から頼まれた仕事が、本当に重要なのか、それとも優先度を低くすべきものなのかを判断できるようになる。
もしかしたら、同僚や上司はストレスを抱えていて、他の人に仕事を押しつけようとしているのかもしれない。
自分にとって何が重要かを見失ってはいけない。一番大切なのは、誰かから押しつけられた仕事ではなく、自分の責任範囲の仕事をしっかりと成し遂げることだ。
正しい判断をするために大切なこと
この「緊急性と重要性を区別する考え方」が有効なのは、職場だけではない。それは人生全般にも当てはまる。私たちにとって本当に大切なことは何だろう。
たとえばそれは、子どもたちが健やかに成長することや、家族や大切な人を危険な出来事から守ること、人生をできる限り豊かなものにすること、などだろう。
このように自分にとって本当に大切なことを明確にしていれば、慌ただしい毎日の中でも、動じずに正しい判断ができ、流されずに自分を保てるようになる。
緊急性と重要性の違いを忘れないようにすることで、自分の内なる声を聞く力を保てるのだ。
救急医も慌ただしい状況の中で働かなければならない。一般的なオフィスとは違い、救急医療室にはメールではなく負傷者が洪水のように押し寄せる。
救急医はこうした緊急の状況の中でも、内なる指針に従って行動する。周りの喧騒にも心を乱されず、重篤な患者を見極める。長年、「1つでも多くの命を救うためにもっとも重要な行動をとること」の最優先事項に即した経験を積み重ねることで、緊急の状況でも自分の内なる声を聞けるようになっているからだ。
[本記事は『幸せな自信の育て方』(シャルル・ぺパン著、児島修訳)を抜粋、編集して掲載しています]