「被ばく」で甲状腺がんは増えているのか
これは「原発事故による被ばく」のせいなのか、それとも「過剰なスクリーニング」のせいなのか――。
2011年の福島第一原発事故後、子どもの甲状腺がんが多く確認されている。一般的に、子どもの甲状腺がんの発症数は年間100万人に1〜2人程度だが、福島県の県民健康調査などで約300人が甲状腺がんかその疑いと診断された。
このような話を聞くと、「被ばく」という言葉が頭に過ぎる人も多いだろう。チョルノービリ原発事故後、やはり子どもの甲状腺がんが多く確認されたのは有名な話だ。
しかし、国連の科学委員会は「被ばく」の可能性を否定している。7月21日、福島県いわき市を訪れた科学委員会は研究者らとの意見交換会を行い、「総合的に被ばく線量は少なく、がんなどの健康被害が増加する可能性は低い」と説明した。
明らかに異常な症例数にもかかわらず、なぜそのようなリスクを過小評価するのかと不思議に感じる方もいるだろう。中には、「原発マネーに毒された国連が原発推進のため、報告書の結果を歪めているのではないか」などと陰謀論的な見方をされる方もいらっしゃるかもしれない。
ただ、実はこの結論にはちゃんとした理由がある。昨年3月に公表された、事故後の放射線被ばくによる健康への影響に関する報告書の中では、この現象をこのように推察している。
「超高感度のスクリーニング検査の結果が影響している」
実は福島県では2011年から現在まで5回にわたって、「子どもたちの甲状腺の状態を把握し、健康を長期に見守ることを目的」にして、甲状腺検査を実施している。これがあまりにも大規模かつ「高感度のスクリーニング検査」であるがゆえ、大量の症例数をカウントしているというのだ。