22年度の診療報酬改定が行われた。コロナ対応等への改定とならび、一般の人にも影響が大きそうなのが「大病院の紹介状なしでの受診」に対する個人の負担増だ。負担金の増額のみならず、これまでは通っていた猶予措置の一部も通らなくなる。さらに、この改定は紹介状なしで患者を受け入れていた病院側への「ペナルティー」とも取れるものも含んでいるのだ。連載『医療費の裏ワザと落とし穴』の第239回では、今後この制度がどうなるのか、受診する人は何に注意すればいいのかについて詳しく見ていこう。(フリーライター 早川幸子)
2年に1度の診療報酬改定で
紹介状なしの大病院受診時定額負担が7000円に値上げされる
4月1日、2022年度の診療報酬が改定された。
診療報酬とは、簡単にいうと、公的な医療保険(健康保険)で受ける医療や処方される薬などの価格のことだ。
国民皆保険の日本では、病院や診療所で受ける医療行為、使用される薬のほとんどに健康保険が適用されている。この健康保険を使って受ける医療(保険診療)は、誰もが公平に受けられるようにするために、住んでいる地域に関係なく全国一律で、国が価格を決めている。
この医療へのアクセスの公平性を保つという目的のほかに、診療報酬が果たしている役割が、「国が目指す医療の提供体制」への誘導だ。
どういうことかというと、日本の病院や診療所は自由標榜制で、医師は開業する診療科を自由に選ぶことができる。さらに、民間の病院や診療所を中心とした医療の提供体制が取られているため、行政は医療機関に対して、開設する診療科や提供する医療サービスを強制することもできない。
一方で、病院や診療所、薬局は経営のために、高い価格の診療科や医療サービスを取り入れる傾向が強い。そのため、国は、経済的インセンティブを働かせて、そのときに国として必要な医療体制、充実させたい診療科などに高い診療報酬を付けることで、国が望む医療の提供体制へと医療機関を誘導しているのだ。
今年は、2年に1度の診療報酬改定の年に当たる。この中、コロナ禍で明らかになった日本のいびつな病床制度、医療スタッフの過重労働などの問題点を改善していくような項目に、高い診療報酬が付けられている。
だが、診療報酬が高くなれば、患者が病院や診療所、薬局などで支払う医療費の自己負担分にも影響が出てくる。そのひとつが「紹介状なしの大病院受診時の定額負担」の見直しだ。
●定額負担が免除される10の例外規定も厳格化、別科を受診していてもダメ