ウナギが絶滅しそうなら養殖すればいい!?絶滅しそうな生きものについて子どもと一緒に考える

生きものの絶滅確率は99.9%――つまり、ほぼすべての生きものは絶滅する運命にあります。絶滅に至るさまざまな背景を、子どもたちにもわかりやすく面白くまとめた書籍『わけあって絶滅しました。』は、シリーズ累計90万部のベストセラーに。同シリーズを企画・編集し、テレビ番組「セブンルール」でも取り上げられるなどいま話題の編集者でもある金井弓子さん(ダイヤモンド社)に、「絶滅」の奥深さについて語っていただいた前回につづき、同シリーズの第2弾『続わけあって絶滅しました。』、第3弾『も~っとわけあって絶滅しました。』では、「繁栄した生きもの」や「いま絶滅しそうな生きもの」「絶滅した…と思ったら生きていた生きもの」などの解説も含めた理由について聞きました。(書籍オンライン編集部)

「わけあって繁栄」した生きものも

――前回記事では、シリーズ第1作の『わけあって絶滅しました。』で、なぜ「絶滅」をテーマにしたのか聞きました。つづくシリーズ第2弾の『続わけあって絶滅しました。』、第3弾の『も~っとわけあって絶滅しました。』では、「絶滅」をテーマの核としながらも、「繁栄した生きもの」や、「いま絶滅しそうな生きもの」、「絶滅した…と思ったら生きていた生きもの」などの解説も加わって、情報の幅や密度がぐっと上がった印象です。

金井弓子(以下、金井):第1弾は、絶滅についてざっと網羅して、進化の流れをつかめるよう作りました。ただ、読者であるお子さんたちのとっつきやすさを優先して、内容の面白さで掲載順を決めたので、生きものが生きていた年代順に並んではいるわけではないんです。年代順の情報については、巻末に切り離せる付録として「絶滅全史」をつけることで、少しだけフォローはしたんですけど。

 でも、第1弾の読者のみなさんからの感想ハガキなどを見る限り、興味をもったお子さんたちにはかなり読み込んでもらえたことがわかったし、もう少し突っ込んだ情報を知りたいというお声もいただきました。

――想像以上に、深い情報も歓迎されてたんですね。

金井:そうなんです。なので第2弾では、より知識を深められることを意識しました。

 たとえば「古生代」「中生代」「新生代」「現代」と年代順に紹介したうえで、その年代ごとに地球で起こったことの総論を解説する「地球さんの手記」というコーナーを設けたりしました。ほかにも、第2弾で初めてつくった「わけあって繁栄しました」というコーナーは、「人間に便乗して繁栄」したイエネズミや、「人間の天敵になって繁栄」したカなど、どれも「栄えてきた」という明るい話なので、すごく好評でした。

ウナギが絶滅しそうなら養殖すればいい!?絶滅しそうな生きものについて子どもと一緒に考える「地球さんの手記」コーナーの一例

 あとは、第1弾で大人の読者の方から多くいただいていた「(生きものを絶滅させる)人間はおろかだ、醜い」といった悲観的な感想に対するアンサーを提示する意味で、「人間インタビュー」というコーナーもつくりました。

ウナギが絶滅しそうなら養殖すればいい!?絶滅しそうな生きものについて子どもと一緒に考える「人間インタビュー」コーナーの一例

――「人間インタビュー」では人間がやったことに対する「賛成派」と「反対派」の意見を両方載せて、「読者の方にあなたはどう思う?」と考えてもらう形になってましたね。金井さんがよく言っている「読者の方が考える余地を残す」というところかな~と想像してました。

ウナギが絶滅しそうなら養殖すればいい!?絶滅しそうな生きものについて子どもと一緒に考える金井弓子(かない・ゆみこ)
書籍編集者。ダイヤモンド社書籍編集局第一編集部副編集長
大学卒業後に実用書出版社に入社し、営業職を経て書籍編集職に。『ざんねんないきもの事典』など、児童書から女性実用まで幅広い企画を担当。2016年にダイヤモンド社に入社。シリーズ累計販売部数90万部の『わけあって絶滅しました。』のほか、同58万部の『東大教授がおしえる やばい日本史』『東大教授がおしえる さらに!やばい日本史』『東大教授がおしえる やばい世界史』、同35万部の『せつないどうぶつ図鑑』『生まれたときからせつない動物図鑑』などを担当。(写真撮影:和田佳久)

「地球上で生き残る厳しさ」を体感できる付録??

――第2弾『続わけあって絶滅しました。』の付録「生きのびるむずかしさ体験めいろ(迷路)」は、ものすごい複雑さですよね。つい作り手の目線で、あの複雑怪奇な迷路を作ると思うと、気が遠くなりますが……。ゴールに到達するルートは何通りかあるんでしょうか?

金井:ルートは51通りもあります。「地球で生き延びることのできる生物は0.01%」だから、その「厳しさ」を味わうことができる、という迷路です。

 作ってくださったベテランのイラストレーターさんからは、「今までの仕事で一番作業が大変だったけど、面白かった」と言われました。51通りのルートがきちんと開通できているか最後に確認するための、塗りつぶして校正する作業は自分でやったのですが、丸2日ぐらいかかったかな……これが地球で生きのびる大変さか、と私も実感できました(笑)。

――自分で企画した大変さを自分で味わうなんて、金井さんマゾですね~(笑)。

 続く第3弾『も~っとわけあって絶滅しました。』では、現代の問題がかなり積極的に取り上げられていました。「わけあって絶滅しそうです」など現在進行形の問題も多く、面白いなかにも社会派色が増しているというか、ためになりました。