コロナ禍のリモートワークなど生活スタイルの変化により注目されたのが、資産形成に対する関心が高まったこと。特に、20~30代の若い人たちの間で、つみたてNISAの口座開設が急増した。そんな状況の中、つみたてNISA本の決定版ともいえる『最新版 つみたてNISAはこの9本から選びなさい』(中野晴啓著、ダイヤモンド社)が3月16日に発売。本連載では、つみたてNISAを利用して長期投資や資産形成をしてみたいという人に向けて、失敗しないつみたてNISAの賢い選び方・買い方について、同書から抜粋して公開する。「つみたてNISAってなに?」という投資ビギナーの人でも大丈夫。基本的なところからわかりやすくお伝えしていくので、ぜひ、お付き合いください。

長期投資をするならば、運用管理費用の差が成績に直結する!Photo: Adobe Stock

年1%の差でも30年間運用すると、
資産総額に81万円以上の差が生じる!

 そもそも投資信託を用いて長期投資をする場合、高い運用管理費用率は最終的な手取り収益に大きな影響を及ぼします。

 簡単に比較してみましょう(下図表)。

 たとえば、年5%のリターンが期待できる2つの投資信託があったとします。投資信託(A)の運用管理費用率は2%、投資信託(B)のそれは1%だとしましょう。

 そして、手持ちの100万円を30年間運用します。この場合、30年後にそれぞれの資産総額が税引き前でどのくらいになるのかを計算すると、次のようになります。

 投資信託(A)=242万7262円
 投資信託(B)=324万3398円

 どうですか。

 わずかに年1%の差しかないのに、30年間も運用を続けると、資産総額に81万円以上の差が生じてしまうのです。

運用でリターンを1%向上させるためには、
血のにじむような努力が必要

 よく、運用管理費用率の高低については、次のようなことを言う方がいます。

「別に年2%の運用管理費用率でも、運用が好調で年30%のリターンが得られれば、1%程度の差に目くじらを立てる必要はどこにもない」

 確かに、年30%ものリターンが確実に得られるのであれば、1%の差などは大したことはないのかもしれません。

 でも、長期で常に30%のリターンが得られる保証はどこにもありません。1年で30%ものリターンが得られるようなファンドというのは、基本的に非常に高いリスクを取って運用していると考えることができます。場合によっては、マイナス30%になることもあるということです。リターンが大きく下がった時も1%の差は大したことがないと、胸を張って言えるでしょうか。

 この連載の目標である年6%程度のリターンを狙うというのであれば、運用管理費用の1%の差というのは、非常に大きくなります。

 これは、多くのファンドマネジャーが口を揃えて言うことですが、運用でリターンを1%向上させるためには、それはもう血のにじむような努力が必要だということです。

 しかし、コストとなる費用を抑えることは、投資信託を選ぶ際に確認すれば誰にでもできることです。

 だからこそ、投資信託を選ぶ時には、しっかり運用管理費用を比較して、商品内容によって適正な水準の投資信託を選ぶことが大切なのです。

中野晴啓(なかの・はるひろ)
セゾン投信代表取締役会長CEO
一般社団法人投資信託協会副会長、公益財団法人セゾン文化財団理事
1987年明治大学商学部卒業、クレディセゾン入社。2006年セゾン投信を設立。2020年6月より現職。つみたてで、コツコツと資産をふやす長期投資を提言。国際分散型投資信託2本を15年以上運用し、個人の長期資産形成を支えている。客観的な定量評価を行う「R&Iファンド大賞」最優秀ファンド賞を9年連続受賞。口座開設数16万人、預かり資産5000億円を突破。
主な著書に『最新版 投資信託はこの9本から選びなさい』『投資信託はこうして買いなさい』(以上、ダイヤモンド社)他多数。