5月――この春入社した新入社員が、研修を経てそろそろ現場に配属されるという企業も多いと思います。異動者や転職者などの新顔が入ってくるという部署も多いのではないでしょうか。そういう新入りのメンバーに対しては、「初めの接し方」に気を配る必要があります。上司や先輩であるあなたの言葉一つで、新入りがすぐに打ち解けて力を発揮してくれるようになるのか、それとも信頼関係がなかなか築けずギクシャクした状態が続いてしまうのかが決まってしまうからです。
そこでシリーズ世界累計259万部突破のベストセラー『伝え方が9割』の著者、佐々木圭一さんに、新人に嫌われない「伝え方」を教えてもらいました。
■Case1「もっとスピードアップして!」
上司からすれば、たとえ新入りであっても能動的にどんどん仕事を進めてほしいと思うものです。忙しいときはなおさら、「スピードアップして!」と言いたくもなりますよね。
ただ、新入りの立場からすれば、「仕事の内容も進め方もまだ把握できていないのに、スピードアップなんて無理!」とネガティブに捉えてしまうでしょう。自分のやり方を否定されたと感じ、萎縮してしまう人もいるかもしれません。
ではどうすればいいか。ぜひこのように伝えてみてください。
◎「佐藤くん、入社したときよりも、できることが多くなってきたね。これからはクオリティだけじゃなくスピードも意識して。佐藤くんの仕事のレベルが上がるよ!」
これは、「認められたい欲」「相手の好きなこと」という2つの伝え方の技術を使った伝え方です。「できることが多くなってきたね」と認められると、人は誰しも嬉しくなり、自分から期待に応えたいと思うようになります。
そして「仕事のレベルが上がる」というのは、相手の好きなことです。相手のメリットを伝えると、いい印象を与えるだけでなく、自分から前向きに仕事に取り組もうと思ってもらいやすくなります。
今の若手社員は、成長意欲が高いのが特徴。この伝え方であれば、自分から「成長するためには、もっとスピードを意識したほうがいいな」と思えるでしょう。
■Case2「これコピーお願い」
忙しいときに、近くにいる新人に「コピーお願い!」と頼むシチュエーションはよくあるものです。もちろん、この伝え方でもコピーを取ってくれるでしょうが、「いま別のことをしていたのに…面倒だな」「雑用係だと思っているのかな」などと思われてしまうかもしれません。
こんなシチュエーションの場合は、このように伝えてみてください。
◎「前回資料をコピーしてくれたの、田中さんだよね? すべて完璧に揃っていて、おかげでスムーズに会議ができたよ。ありがとう。今日もお願いできるかな?」
まず、「すべて完璧に揃っていて」「スムーズに会議ができた」は、伝え方の技術「認められたい欲」を使っています。このように言われると、「コピーも重要な仕事なんだな。これからも丁寧にやろう」と自然と思いやすくなります。
そして「ありがとう」は、伝え方の技術「感謝」です。人は感謝されると、ちょっとだけ人と人との距離が縮まります。距離が縮まった相手にお願いされると断りづらくなるだけでなく、「もっとちゃんとやろう!」と思えるようになります。
「コピーお願い!」も、伝え方の技術を使ったこの伝え方も、伝えたいこと自体は同じです。しかし、後者の伝え方のほうが、頼まれたほうは圧倒的に嬉しいはず。コピーミスがないように気を配るようになり、引いては一つひとつの仕事の精度も高まるでしょう。