サカタのタネが高収益・ほぼ無借金経営の理由、創業期の「苦い経験」とはPhoto:PIXTA

今回は、「種子」の領域で世界を圧倒する日本企業、サカタのタネに焦点を当てる。高い収益性に裏打ちされた「ほぼ無借金経営」を行う同社だが、その裏には創業期の「苦い経験」があった。(中京大学国際学部・同大学院経営学研究科教授 矢部謙介)

高い収益性を誇る
サカタのタネの決算書

 今回は、野菜や花の種子の卸売事業などを手がけているサカタのタネの決算書を見てみよう。

 サカタのタネは、ブロッコリーの種子で世界シェアの65%を、トルコギキョウでは世界シェアの70%を占める種苗会社だ。また、2022年5月期の連結売上高における海外売上高の割合が約71%を占めるグローバル企業でもある。

 サカタのタネの決算書には、どのような特徴があるのだろうか。そして、その背景にあるサカタのタネにおける経営方針についても見ていこう。

サカタのタネが高収益・ほぼ無借金経営の理由、創業期の「苦い経験」とは筆者作成
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 上図は、サカタのタネの決算書を図解したものだ。

 まず、貸借対照表(B/S)から見ていく。B/Sの左側(資産サイド)で最大の金額を占めているのは、流動資産(約890億円)だ。ここには、棚卸資産(在庫)が約380億円、現預金が約280億円、売上債権(受取手形、売掛金及び契約資産)が約180億円計上されている。