生命保険各社で、新型コロナウイルス感染症に関連する保険金と給付金の支払いが激増している。業績にも影響が出始め、業界内では警戒感が高まっているが、本番はこれから。足元の第7波の影響は年末に向けて現れることに加え、極めて「厄介な問題」にも直面することになりそうなのだ。(ダイヤモンド編集部 片田江康男)
3カ月で昨年1年分の
給付金支払額を突破!
「増えるとは思っていたが、ここまでとは思わなかった」。新型コロナウイルス感染症に関連した保険金と給付金の支払額を見て、大手生命保険幹部は驚きを隠せない様子でこう話す。
新型コロナ感染症は、入院を勧告される2類感染症に分類されている。そのため生保各社は、新型コロナ罹患者が軽症で自宅療養した場合でも、入院したと判断。「みなし入院」として入院給付金の支払い対象としている。
このみなし入院に対して支払った給付金が、2022年1月以降の第6波の影響で激増。22年度第1四半期、日本生命保険と第一生命保険、明治安田生命保険、住友生命保険の日系大手生保4社が支払った給付金は約840億円に上り、21年度の12カ月間で支払った額をわずか3カ月で軽々と超え、約2倍に達した。
業績にも無視できないインパクトを与えている。業界最大手の日本生命は、同期のみなし入院の給付金として、業界最多の約372億円(グループ内の生保を含む)を支払った。この影響を受けて、日本生命単体の保険事業の利益である危険差益は、前年度同期比43.4%減の555億円にまで落ち込んでしまったのだ。
まさに“給付金ショック”に直撃された格好だが、このショックはまだ序の口だとみられており、業界関係者は戦々恐々としている。というのも、足元で起こっている第7波の給付金支払いの山は、秋から年末にかけて本格的に現れるからだ。
しかも、単に膨大な第7波の支払い請求をさばかなくてはならないというだけではない。同時に、極めて「厄介な問題」への対応を迫られることになりそうなのだ。次ページでは保険業界を揺るがす、知られざる実態を解説していく。