発達障害のひとつであるADHD(注意欠陥・多動症)の当事者である借金玉さん。早稲田大学卒業後、大手金融機関に勤務するものの仕事がまったくできずに退職。その後、“一発逆転”を狙って起業するも失敗して多額の借金を抱え、1ヵ月家から出られない「うつの底」に沈んだ経験をもっています。
近著『発達障害サバイバルガイド──「あたりまえ」がやれない僕らがどうにか生きていくコツ47』では、借金玉さんが幾多の失敗から手に入れた「食っていくための生活術」が紹介されています。
働かなくても生活することはできますが、生活せずに働くことはできません。仕事第一の人にとって見逃されがちですが、生活術は、仕事をするうえでのとても重要な「土台」なのです。
今回は、本書で紹介した「料理の原理原則」を使ったレシピをご紹介します。
本日も忙しいのでとっとと作って食える夏野菜カレー。材料はこちらです↓
①香り油を作る
まずは、花椒と唐辛子をテンパリングして「香り油」を作りましょう。「テンパリング」、スパイスは粉でダイレクトに入れると苦味が出てしまったり、うまく香りが出なかったりするのでとりあえず油に香りを移しておこう、みたいな技のことです。
ラーメン屋さんとかでも最近あるじゃないですか「香り油」みたいなやつ。あれを作る技です。覚えると料理の幅がドカっと広がりますが、めんどくさければ無視してください。別に必須ではありません。いい香りの油を作れたら楽しいよ、くらいの話です。
画像は赤花椒と唐辛子をテンパリングしています。唐辛子を油でこんがりさせてやるといい香り出ますよね。実は言うほど難しくないので、スーパーで適当なスパイス買って来て、油に投げ込んでみるのオススメです。いつもの炒めものにスパイスの香りが乗ってたら……ちょっと楽しいですよ。
ペペロンチーノを作る時、ニンニクと唐辛子を油でじっくりやるじゃないですか、実はあれも同じ技術です。なんかできそうな気がしてきたら、ぜひトライしてみてください。この技を習得するとオリジナルラー油とか作れます。
②鶏モモ肉に味付けする
鶏モモはチリパウダーと五香粉、それに塩をうってしばらく寝かせておきます、30分くらいあるといいですが、10分でも0分でもいいです、なんせカレーなので。
めんどくさければ塩だけでいいです。その時は市販カレー粉を使うと良いですね、あれは配合バランスが極めて優れていますので。市販カレー粉で味付けしてもおいしくないものは人類の食べ物ではないと言われるくらいです。
実際、「市販カレー粉よりおいしいスパイスブレンド」を作れと言われると、少なくとも僕は結構怖いです。だって、あれめちゃめちゃおいしいんだもの……。
③白濁スープを煮詰める
その間に白濁スープを某下一品の「超こってり」くらいに煮詰めます。ご家庭に白濁スープなんかないよ!と怒られそうですが、実はスーパーにいくと「鶏白湯」とか「家系スープ」はわりと売っています。僕は豚の頭と鶏ガラで大量にとったスープを冷凍備蓄して使っていますが、市販のもおいしいですよ。
④鶏モモをカット
鶏モモは一口小(そんな言葉あったっけ?)くらいにカットしましょう。
これ↑はご家庭でできるプロの技「いっぱい切るものあると、いちいちまな板洗うのめんどくせえ」の解決策です。まな板の上に、100均のまな板を乗せる。
これなら食洗器ぶちこめるからね。肉切ったまな板で野菜切りたくない、でも洗うのはめんどくさい……あの悩みの解決策はこれです。まな板は食洗器に入らないのでなるべく洗いたくないですね……。
⑤スパイスを挽く
スパイスを挽きましょう。ミルに黒コショウ・白胡椒・花椒・松の実これらが入っています。カレーにはスープの下支えになる風味とコクが欲しいけど、ココナッツミルクとかヨーグルトだと面白味に欠けるのでひとひねりしました。ここも「料理オタクがめんどくせーこと言ってるな~」と思った方は無視されてください。市販カレー粉にヨーグルトとかバターで十分おいしいです。トマト缶でもOK。
よし挽けた。松の実入れるとネットリするので、ゴムべらないと取り出すのすっごい苦労します、気をつけましょう。
⑥鶏肉に粉打ち
そして、鶏にカタクリ粉とか米粉を打って…、ここだけはめんどくさいけど必須です。鶏そのまま焼いては味がなじまないので、「粉打ち」だけはやった方が絶対に良いです。
⑦火入れ
油断したらスープが固体に戻りかけていた。じゃあ、鶏焼いていきましょう。火入れのコツは「触り過ぎない」です。香ばしさが損なわれてしまうので。返しは1回、弱めの火でじっくりやるといいでしょう。
スパイス入れてナス入れて油回しましょう。ナスはね~、油吸うとめっちゃうまいんですけど、素揚げとかやるとかなりサイコホラー食材なんだよね…。油はもう、だいたいの料理において入れれば入れるほどうまいですが、現代人的には減らしたいですよね。その辺は各自葛藤されてください。
僕は高血圧が気になるお年頃なので、最近は油と塩を控えています。黙れデンジャラスこそグルメと怒られるのは覚悟の上です、血圧上230とか本当に怖かったので……。
いい感じにスパイスと油が回ったら万願寺唐辛子を入れましょう。コイツは火が入り過ぎたら食えたモンじゃない食材なのでここからはちょっと急ぎ目。
イヨっと。
はい、ここでさっき煮詰めた「超こてスープ」入れます。これやるとわかりますが、いわゆる「10円玉が浮く」ような超ドロスープは鶏ガラとトンコツだけでは作れません。天某一品のこってりスープ何が入ってるのか、考えてみるのも楽しいですよね。
あとは普通に料理です。塩で味キメて、このカレーは片栗粉(もしくは米粉、コーンスターチなど)でトロ味つけるカレーです。炒った小麦粉はちょっと粉っぽくなるからやめた方がいいかもしれません。
⑧完成!
ヘイ、カレェェイ二丁あがりやした!豪快にシビれるので、勢いよくお召し上がりください!
隠し味にヒハツも入っており、ここまで行くとほぼ「漢方」なので、「暑くないのに汗がダラダラ出る」みたいな不思議体験が可能です。唐辛子ほど口に残る辛さじゃないしね。
香味油はどうした~~(仕上がり寸前に入れてます)。うまく撮影できてない、悲しい……。
見慣れない食材がいっぱい出て来てウザい料理になってますが、実はこの料理はめちゃめちゃシンプルです。
「肉を焼いて野菜を炒めて、そこにスープを流し込み、スパイスで味付けして(片栗粉などで)トロ味をつけたらそれはカレー」
この事実に、みなさまは既にお気づきだったでしょうか。この中華式カレー、スープを用意さえしとけばいつでも10分で作れるので覚えて損のないレシピです。いうて、市販カレールー使ってもカレー作りには30分以上かかりますからね。めっちゃ速いのがこの料理のいいところ。
「そもそもこれはカレーなのか?」というお話には、「中華料理屋さんではそう呼ばれていることがあります」と答えます。「鶏と茄子と万願寺唐辛子のスパイスあんかけ丼」って呼ぶより、「カレー」って呼んだ方がいいよね。なのでこれはカレーです!ぜひ、冷蔵庫の残り物オリジナルレシピで作ってみてください。
肉と野菜を炒めてスープ流し込んで味付けして片栗粉でトロ味つければ、それはおいしいカレーです!
あ、忘れてた。「なんか一味足りない」と感じた場合、大抵の場合は化学調味料と塩を足せば解決します! 間違ってもチョコとか醤油とか入れちゃだめですよ!「なんか一味足りない」は大抵の場合「うまみ」か「塩」のどちらか不足です。素直に味の素入れましょう、うまみが強いと塩を減らせてとってもヘルシーです。
※この記事は、『発達障害サバイバルガイド』からのスピンアウトです。