「私はなぜいつもうまくいかないんだろう」「もっとラクに生きられたらいいのに」と思うことはないだろうか。そんな人におすすめな書籍が『こころの葛藤はすべて私の味方だ。』だ。著者の精神科医のチョン・ドオン氏は精神科、神経科、睡眠医学の専門医として各種メディアで韓国の名医に選ばれている。本書は「心の勉強をしたい人が最初に読むべき本」「カウンセリングや癒しの効果がある」「ネガティブな自分まで受け入れられるようになる」などの感想が多数寄せられている。本書の原著である『フロイトの椅子』は韓国の人気女性アイドルグループ・少女時代のソヒョン氏も愛読しているベストセラー。ソヒョン氏は「難しすぎないので、いつもそばに置いて読みながら心をコントロールしています」と推薦の言葉を寄せている。自己啓発書では物足りなくなった読者に、自分と他人の本心を探り、心の傷を癒すヒントをくれる1冊。今回は日本版の本書から特別に一部抜粋・再構成して紹介する。(初出:2022年9月14日)
「別れ」がもたらす圧倒的な絶望感
絶望の中でもっとも大きなものは、身近な人の死です。
アメリカの精神科医トーマス・ホームズとリチャード・レイが、ストレスを点数化するために作成した『社会的再適応評価尺度』初版では、結婚のストレスが中間値の50点であるのに対し、配偶者の死は100点で、人生で体験するストレスの1位としています。
死の衝撃と悲しみはとても強力で、亡くなった人のあとを追って死ぬ人もいます。
体は生きていても、心が死ぬこともあります。
故人の命日や誕生日に、重いうつ症状が出ることは、めずらしくありません。
これを「命日反応(記念日反応)」といいます。
死だけが私たちを引き裂くわけではありません。
やむをえない現実的な事情によって、時には人間の愚かさと誤解によって、別れるしかないこともあります。
失恋の傷はひりひりと痛みます。
愛する人は去ってしまいました。
もう戻れないとわかっているのに、ときどき曲がり角からあの人が現れそうな気がします。
体の一部が失われたかのような衝撃に戸惑います。
ひたすら泣き続けて、涙が枯れてしまいます。
なぐさめようとする人にも、近づいてきてほしくありません。
喪失や裏切りは、恋人との間だけで起こることではありません。
ずっと信じていた友だちに裏切られたら、誰かがその人の名前を口にしただけで、傷口に塩を塗られたような痛みを感じます。
周りの人たちは他人事だと思って「仲直りをしろ」といいますが、そんな言葉を聞くたびに、傷口が広がって心に血が流れます。
でも、自分を裏切った人をひどい目に遭わせようとして、時間と労力を使っても意味がありません。
最大の復讐とは、その相手を完全に忘れてしまうことなのです。
(本稿は、チョン・ドオン著 藤田麗子訳『こころの葛藤はすべて自分の味方だ。 「本当の自分」を見つけて癒すフロイトの教え』から一部抜粋・再構成したものです)