少額短期保険,コロナ給付金,金融庁Photo by Yasuo Katatae

新型コロナウイルス感染症に関連する保険金や給付金の請求が増え、規模の小さな少額短期保険業者の経営を圧迫している。実際、複数の少短業者が「これ以上の給付金の支払いには耐えられない」と業界団体に窮状を訴えていることが分かった。少短を窮地に追い込んでいる最大の要因は「みなし入院」の扱いだ。(ダイヤモンド編集部 片田江康男)

3~4社がコロナ支払いにお手上げ
早急な対応迫られる少短協会と金融庁

 少額短期保険(少短)は、医療保険であれば保険金の上限80万円、保険期間1年以内という、「少額」な保険金で「短期」の保険期間が最大の特徴。近年、手軽な保険商品で新たな顧客を獲得しようと大手生命保険・損害保険各社が参入し、活況を呈している。

 その少短市場で、入院した際に入院給付金を支払うタイプの商品を販売する3~4社の少短業者が、押し寄せる新型コロナウイルス感染症に関する保険金・給付金の支払い請求に「ギブアップ」を表明。業界団体の日本少額短期保険協会に泣きを入れていることが分かった。

 複数の少短関係者によると、それらの少短業者は第7波が本格的に到来する7月初旬に協会に駆け込み、窮状を説明。それを受けて、協会は財務局と金融庁に対応を非公式に相談したという。

 少短の場合、保険会社の売り上げに当たる収入保険料は、大手でも50億円規模だ。株主に大手企業がいれば話は別だが、大手生命保険・損害保険のような強固な財務基盤を持たない。

 そのため、現在のような新型コロナ感染症関連の保険金・給付金請求の激増は、瞬く間に経営悪化に結びつく。

 しかも少短には、契約者を保護するセーフティーネットが設計されておらず、経営破綻した場合に損失を被るのは契約者だ。早急な対応が必要であることはいうまでもない。

 最悪の事態も十分に起こり得る状況で、協会と金融庁はどのような対応をするのか。次ページでは、少短各社が泣きを入れるに至ったきっかけも含め、解説していく。