ジェローム・パウエル米連邦準備制度理事会(FRB)議長が注目の講演でインフレ退治に向けて厳しい姿勢を示すだろうことを、投資家は事前に承知していた。それでも、パウエル氏の発言は市場を揺らし続けている。カンザスシティー連銀主催の経済シンポジウム(ジャクソンホール会議)を通過した週明け29日の取引では、FRBが2023年に入っても急ピッチの利上げを継続するとの見方を織り込む動きが広がった。市場関係者が週末にパウエル氏の講演を冷静に分析した結果だ。米国債利回りは上昇し、市場のインフレ予測指標は今年最低水準に低下。FRBが近く積極的な利上げ姿勢を和らげるとの期待はさらにしぼんだ。こうした金融市場の反応は、26日の講演までパウエル氏のタカ派姿勢を完全に織り込んでいなかったことの裏返しだ。投資家はこの10分間の講演で、たとえ経済成長を犠牲にすることになっても、インフレ退治に注力するというFRBの覚悟をこれまで以上に明確に認識することになった。