「高齢者の医療費負担が1割から2割に」と慌てる人が意外に知らない制度の実態写真はイメージです Photo:PIXTA

10月から75歳以上の医療費の自己負担額が上がる。これまで窓口での自己負担額が1割だったものが、2割になるのだ。ネットでは不安の声も流れるが、実態を理解せずにあおる内容のものも多い。実はこれはすべての後期高齢者を対象とした値上げではない。連載『医療費の裏ワザと落とし穴』の第246回では、今回の制度変更の実態を詳しく解説しよう。(フリーライター 早川幸子)

75歳以上の高齢者、医療費の窓口負担が
2割になるのはどんな人?

 10月1日から、75歳以上の人が窓口で支払う医療費の自己負担額が見直される。これまで窓口負担は1割だったが、所得が一定以上ある人は2割に引き上げられるのだ。

 政府への信頼が薄い日本では、“お上”に納める税金や社会保険料などの引き上げに対する抵抗感が大きい。今回の後期高齢者の窓口負担の引き上げについても、一部の医療者団体などからは、制度の見直しを求める声も上がっている。

 特に今は、長引くコロナ禍と、ウクライナ情勢の悪化によって物価が大幅に上昇し、一般家庭の家計は厳しい状況に置かれている。こうした状況下で医療費まで引き上げられることに、不安を覚える人がいるのも無理はないことだ。

 ただし、今回の見直しは、75歳以上のすべての人の自己負担割合を引き上げるものではない。引き上げ対象となったのは、一定以上の所得のある人で、後期高齢者全体の23%だ。

 ところが、SNSのつぶやきなどを見ていると、制度の内容を正しく理解しないまま、高齢者の不安をあおるようなものも散見される。

 そこで、今回は、10月1日からの後期高齢者の窓口負担の見直し内容を改めて確認してみたい。

●2割負担になるのは単身で課税所得月額28万円以上、かつ年収200万円以上の世帯のみ
●2025年までは月額負担の上限が3000円までの経過措置がある