「私はなぜいつもうまくいかないんだろう」「もっとラクに生きられたらいいのに」と思うことはないだろうか。そんな人におすすめなのが、2022年8月3日発売の『こころの葛藤はすべて私の味方だ。』だ。著者の精神科医のチョン・ドオン氏は精神科、神経科、睡眠医学の専門医として各種メディアで韓国の名医に選ばれている。本書は「心の勉強をしたい人が最初に読むべき本」「カウンセリングや癒しの効果がある」「ネガティブな自分まで受け入れられるようになる」などの感想が多数寄せられている。本書の原著である『フロイトの椅子』は韓国の人気女性アイドルグループ・少女時代のソヒョン氏も愛読しているベストセラー。ソヒョン氏は「難しすぎないので、いつもそばに置いて読みながら心をコントロールしています」と推薦の言葉を寄せている。自己啓発書では物足りなくなった読者に、自分と他人の本心を探り、心の傷を癒すヒントをくれる1冊。今回は日本版の刊行を記念して、本書から特別に一部抜粋・再構成して紹介する。
「今、この瞬間」を生きる
昨日はヒストリー、明日はミステリー、今日は神の贈り物。
だから現在をプレゼントと呼ぶのだ。
──ジョーン・リバーズ(コメディアン、女優)
「数ヵ月前に恋人と別れた。まだ胸が張り裂けそうなほど痛む。あの人に会いたい。こんなことを考える自分がイヤになる。過ぎた日々を忘れられない自分が憎い……」
恋人と別れて喪失感に陥っている人は、「過去」に立っています。
誰でも自分は現在を生きていると考えますが、そうではありません。
現在にいながら過去を悔やみ、未来を心配している自分に気づいて、思わずギョッとしてしまうことがたびたびあります。
今を精一杯生きたほうがずっと幸せだということをよく知っているからです。
しかし、今を精一杯生き抜くというのは、口でいうほど簡単ではありません。
私たちは当然のように、現在を手にしていると思っています。
そのため、過去を完璧に整理して、未来をしっかり計画すればもっと幸せになれると思い込み、現在を浪費してしまいます。
現在を生きるとは、まず「今」を認識することです。
自分の思考のオーナーになって、雑念に振り回されないようにします。
今に集中して、心のオーナーになることを「マインドフルネス」といいます。
心に浮かんでは消える思考、フィーリング、イメージ、そして体の感覚に注意を向ける行為です。
マインドフルネスはもともと仏教における概念です。
これが精神医学に取り入れられ、実用的な治療プログラムが開発されてきました。今現在の心の動きを、「自分のもの」にするトレーニングです。
心の動きを正しい、間違っていると判断せず、流れる水のようにそのまま受け入れて経験するのです。
現在をないがしろにして過去に執着したり未来を心配したりすると、憂うつ感や不安はどんどん大きくなります。その先には後悔が待っています。
しかし、現在を現在として経験して楽しめば、憂うつや不安などのネガティブ思考を止めることができます。
生きていれば幾千万もの心配ごとが頭に浮かびますが、それらが実際に起こることはほとんどありません。
今、経験していることをプライドや超自我と切り離して静かに観察すれば、悪い経験も笑い飛ばせます。
誰かに裏切られたとしても、いい人生勉強になったと思うようにしてみてください。
考えすぎないことで、自分を自由にすることができます。
(本稿は、チョン・ドオン著 藤田麗子訳『こころの葛藤はすべて自分の味方だ。 「本当の自分」を見つけて癒すフロイトの教え』から一部抜粋・再構成したものです)
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『こころの葛藤はすべて自分の味方だ。』は、自分でも気づかなかった心の傷を見つけ、困難を乗り越えるためのノウハウがつまっています。ぜひチェックしてみてください。