大法院は韓国政府の努力に期待し、決定を先延ばしした。それでも韓国のメディアは、この問題を担当してきた金哉衡(キム・ジェヒョン)大法官(最高裁判事)が9月4日に退官するので、その前に決定があるはずだと一斉に報じた。

 しかし、結論から言えば筆者が主張した通り、金大法官は退官後にその決定が韓国経済に甚大な被害が及ぶことは望まず、決定は行わなかった。

 金大法官の退官に伴い、後任の裁判部がいつ構成されるかもわからない状況となっている。オ・ソクジュン大法官候補に対する国会人事聴聞会特別委員会の報告書採択が与野党の合意の不発により、大法官の空白も長期化する展望である。

 こうした事態の進展によって、尹錫悦政権は時間稼ぎをすることができるようになった。

 それ以上に重要なことは、元徴用工団体として裁判を通じて早期解決の見通しが立たなくなったことで、尹錫悦政権との話し合いに応じる期待が出てくる可能性があることであろう。

 こうした中、朴振外相は2日、光州を訪問、元徴用工と面会した。元徴用工を支援する市民の会は当初、外交部は朴外相との面会を求めるよりも先に大法院に出した意見書に対する謝罪が先であると主張していた。それでも朴外相と元徴用工は面会を行った。

 朴外相は元徴用工と面会し、「強制徴用被害者の方々の問題をできる限り早期に誠意を持って解決していくという強い意思を持っている」「問題がうまく合理的に解決するようにしたい」と伝えた。

 しかし、面会後、記者団から「意見書を撤回する意思があるのか」と問われ、「大法院の民事訴訟規則など法令と手続きに基づいて正当にしたものであり、撤回する考えはない」と回答した。

 さらに「韓日交渉を通じてこの問題を合理的に解決していくため、近く日本を訪問して林外相と協議する」と述べた。

 韓国政府が徴用工問題の解決を模索して設立した官民協議会の第4回会合は5日に開催される予定であるが、元徴用工支援団体はこれには参加しない予定だという。徴用工を巡る問題の解決策づくりはまだしばらく時間がかかりそうである。