国民無視、すべて飲み込んで
肥大化するマイナンバー計画
マイナンバーの肥大化が止まりません。もともと私は、国民総背番号制度ともいうべきマイナンバー制度に賛成でした。米国の社会保証ナンバーのように9ケタの数字をデジタル化して一元化しておけば、コロナ禍のときの給付金のように、国民にすぐに金銭的援助ができると思ったからです。
しかし日本の場合、米国のように戸籍などを設けず社会保障ナンバーに一本化する方向ではなく、住民票も戸籍もすべて残して、さらにマイナンバー制度を加えたあげく、銀行口座や年金の受給口座など色々な個人情報にまで紐づけようという、複雑な制度に変化してしまいました。
もっとも、マイナンバーカードの普及は進んでいるとはいえません。国民全体でカードを持っている人は、3月末の時点で74%です。4分の1の国民がまだ持っていないことになります。私はこの状況に対して、国民がマイナンバーになぜ積極的ではないのか、ひとつの仮説を立て、連載記事「デジタル庁より『デジタル監視庁』を創設せよ」でその解決方法を提唱しました。国民が、政府の個人情報保護に対する責任感についてまったく信用していないから、マイナンバーを取得しないのだと。
実際、今まで個人情報が流出しても、政府の要人は誰も責任をとったことがありません。処罰されたのは個人情報の処理を託された無名の業者ばかりです。 役所から預かったCDを初期化せず、そのまま中国に売りさばいていた業者さえいました。この業者は当然ながら罰せられましたが、この業者を選定した役人、おそらく利権絡みで役人にこの業者を推薦した政治家まで捜査が及ぶことはなく、権限を持つ人間がまったく責任をとらないまま、多数の国民の個人情報は中国に流出してしまったのです。
私がデジタル監視庁の創設を訴えたのは、そういう理由からです。個人情報の流出は、時に大変な損害を国民に与えます。こんなずさんな業者選定を許し、関係責任者が罰せられないのであれば、国民は絶対にマイナンバーを信用しません。独立した捜査権を持つ監視庁を設立すれば、今問題になっているSNS型投資詐欺なども技術捜査力のある捜査陣が捜査し、もっと厳しい要求を海外のプラットフォーマー(メタやエックスなど)に要求し、また国内で厳しく立法化することも可能なはずだからです。
現にEUは厳しくプラットフォーマーに対応する罰金や法律を検討しています。日本政府はただでさえ、米国に弱腰で中国にもモノが言えないのに、捜査権のない丸腰のデジタル庁では何の頼りにもなりません。
私だけでなく多くの識者が疑問を持っているにも関わらず、国民を無視して、マイナンバー計画は肥大化し続けています。
まずは健康保険証と紐づけるということが決まりました。しかも、最初は任意としていたはずが、いつのまにか年内までに義務づけることになりました。12月2日から現行の健康保険証を新規発行しないと決め、マイナンバーカードの保険証利用を強力にプッシュするのです。メリットとしては、特定健診や薬の情報をマイナポータルで閲覧できたり、正確なデータに基づく診療・薬の処方が受けられたり、限度額以上の医療費の一時払いが不要になったりするといった甘い言葉が並べられています。