政治家のニュースは耳にするが、そもそも政治家が何をする人なのか。
なんとなくわかっているつもりでも、「誰かに説明できるか」と言われるとむずかしい。
基本的なことをしっかり理解するためには、どうすればいいのだろうか。
わかりやすいニュース解説でおなじみの池上彰さんに
「なぜ選挙に行く必要があるのか」
「誰に投票したって同じじゃないか」
「私たちが政治のことを私たちが知る必要性」について伺った。
社会人としてこれだけは知っておきたい「超」基本だけをまとめた書籍
経済のこと会社のこと政治のことよくわからないまま社会人になった人へ』から
本書のエッセンスの一部をお伝えしていく。

政治のことよくわからないまま社会人になった人へPhoto: Adobe Stock

あなたの行動で政治は動く

 あなたは、選挙のたびに投票に行っていますか?

 18歳になって、いよいよ投票できると意気込んでみたものの、誰に投票していいかわからなくて困った人もいるでしょう。

 それどころか「選挙に行っても行かなくても、世の中は変わらない」と、投票に行かない人が大多数です。選挙のたびに問題になるのは、投票率の低さです。でも、本当にそれでいいのでしょうか。

 10年以上前のことです。2009年の衆議院選挙で、それまで政権を維持してきた自民党は敗北し、民主党政権が誕生しました。

 当時、民主党が政権を取るのははじめてで不慣れなことが多く、政治は混乱しました。

 民主党に投票した人の中にも民主党に失望した人たちが多く、2012年の選挙で民主党は大きく票を減らし、再び自民党政権が誕生しました。

 このように有権者の一部が投票先を変えただけで、政治は大きく動きました

本当に「誰に投票しても同じ」なのか?

誰に投票しても同じだろうから、選挙に行っても意味がない」という人もいます。

 でも、本当にそうでしょうか?

 自国の利益のために戦争を仕掛ける、財政が厳しいからと弱い人を切り捨てる、自身の利益のために汚職に手を染める。

 私たちが投票しなかったことで、このようなリーダーが誕生してしまう可能性さえあるのです。世界情勢が不安定なときほど、極端な考えのリーダーや政党が一部の熱狂的な人たちに支持されることもあります。

 そうならないためにも、「我がこと」として、投票に行ってほしいのです。

 政治について、私たちはどう考えればいいのか。基本的なことから知ってもらおうと、『政治のことよくわからないまま社会人になった人へ』をまとめました。

 いったい誰に投票すればいいのか、政治はどのような形で私たちの生活に影響しているのか、総理大臣は何をする人なのか、憲法には何が書かれているかなど、人に聞かれたら説明できないことも多いでしょう。

 制度やしくみ、その成り立ちなどを知ることで知識をアップデートし、「我がこと」として政治に関心を持っていただければと思います。

池上彰(いけがみ・あきら)
池上彰さん

1950年、長野県生まれ。慶應義塾大学経済学部を卒業後、73年にNHK入局報道記者やキャスターを歴任する。
94年から11年間にわたり「週刊こどもニュース」のお父さん役を務め、わかりやすい解説が話題になる。2005年、NHK退職以降、フリージャーナリストとしてテレビ、新聞、雑誌、書籍、YouTubeなど幅広いメディアで活躍。2016年4月から、名城大学教授、東京工業大学特命教授を務め、現在も11の大学で教鞭を執る。
『経済のことよくわからないまま社会人になった人へ』『会社のことよくわからないまま社会人になった人へ』『政治のことよくわからないまま社会人になった人へ』は累計70万部超えのベストセラーを加筆・修正の上、3冊シリーズとしてダイヤモンド社より復刊したものである。