日本企業で拡大する
政治と経済のジレンマゾーン
ウクライナ侵攻によって日露関係が悪化する中、ロシア極東の石油・天然ガス開発プロジェクト「サハリン2」について、ロシア政府は8月31日、三井物産と三菱商事が新たに設立したロシア企業に出資することを承認した。
プーチン大統領は6月末、サハリン2について事業主体を新たにロシア政府が設立するロシア企業に変更し、その資産を新会社に無償で譲渡することを命じる大統領令に署名し、ロシア政府は8月5日に新会社を設立して事業を移管し、両社に対して新会社に同様の出資比率で参画するかどうかを9月4日までに通知するよう求めていた。その後、三菱商事と三井物産は8月末までに、新たな運営会社に参画する意向をロシア政府へ通知する意向を表明していた。
三井物産は12.5%、三菱商事は10%をそれぞれ出資していたが、両社とも慎重な検討を重ね、総合的な観点から判断したと発表している。だが、緊迫化するエネルギー事情、世界的な物価高、そして何より日本は輸入する液化天然ガス(LNG)の9%近くをサハリン2に依存しており、両社とも日本のエネルギー安全保障を考慮し、非常に難しい決断を下したといえる。
しかし、世界経済の中で戦う日本企業にとって、今回のような“政治と経済のジレンマゾーン”はいっそう拡大する恐れがある。