コロナ抗原検査キットのネット販売解禁、薬剤師のリアルな反応は?薬剤師のリアルな反応は?(写真はイメージです) Photo:PIXTA

「5類」への緩和前に「第8波」が起きてもおかしくない

 新型コロナウイルス感染症対策として、日本政府は2022年9月以降、抗原検査キットのインターネット販売を解禁した。キットは誰でも処方箋なしでいつでも気軽に購入できる。

 今年の夏は、8月23日に1日の新規感染者数が26万5625人の過去最高を記録するなど、いわゆる「第7波」の猛威によって医療機関や救急車の体制は極度に疲弊した。

 とはいえその後、新規陽性者数は減少し、9月9日時点では9万9474人まで減っている。医療現場は徐々に落ち着きを取り戻しつつあるようだ。11日、加藤厚生労働相はNHKの番組でコロナの感染症法上の扱いの見直しに言及。今後、ワクチン接種やコロナ対応治療薬の開発が進めば、従来の「2類」相当から、季節性インフルエンザ並みの「5類」相当への緩和もあり得るとの見解を示した。

 しかし、具体的な数字データなどを伴った緩和条件は不明だ。また、緩和される前にいつまた「第8波」が起きてもおかしくない。

 9月以降、医療用の抗原検査キットを一般用検査薬としたことによって、

(1)一般市民による「感染の不安解消」を目的とした医療機関の受診を減らせる
(2)感染が確認された軽症の患者には自宅で療養してもらうことで、医療機関への患者の集中を減らせる

 といった効果が期待できる。

 こうした状況を作ることができれば、仮に第8波が来ても、第7波のような医療機関の混乱は回避されるだろう。

 そこで、9月6日、この日からネットで検査キットを販売すると公表していたチェーン薬局の中で、筆者の自宅から最も近い薬局に電話で問い合わせてみた。

 するとその薬局の薬剤師が、「実は今日は、検査キットは販売できないんです…」とさも申し訳なさそうに答えた。

 次ページからは、抗原検査キットにまつわる販売現場の状況を、筆者と薬剤師のやりとりから明らかにする。また、遅々として進まない日本の医療DX(デジタル・トランスフォーメーション)についても考えてみたい。