物価上昇や値上げのニュースが日常化する中で、サイゼリヤの「値上げしない宣言」が注目を集めています。他社が続々と値上げに踏み切り、消費者も価格上昇に驚かなくなりつつある昨今、サイゼリヤはなぜ値上げしないと断言するのでしょうか?そして、それは本当に可能なのでしょうか?同社のビジネスモデルをベーシックなフレームワークでひもときながら、その勝算を検証します。(グロービス・コーポレート・エデュケーション ディレクター 松村真美子)
最強のコスパリーダー・サイゼリヤが
「値上げしない」と表明
原材料費、物流費、人件費と、あらゆるコストが上昇する中で、外食チェーンの値上げラッシュが止まりません。東京商工リサーチによれば、大手外食業者120社のうち今年メニューの値上げを公表した企業は7月時点で53社(44.1%)に上り、秋以降も続々と新たな値上げが予定されています。
そのような中、サイゼリヤ創業者の正垣泰彦会長はNewspicksの取材に対し、次のように語りました。
「給料が増えない中で、いまサイゼリヤが価格を高くするとお客さんはどうなります?困るでしょう。だから、サイゼリヤは値上げしない。極めてシンプルな話です」
確かにサイゼリヤはお財布に優しい価格で広く知られています。同店のメニューには、代名詞である「ミラノ風ドリア」300円、牛肉100%の「ハンバーグステーキ」400円、イタリア直輸入の「グラスワイン」100円(いずれも税込み)など、リーズナブルな価格が並びます。
一方で味にもこだわり、そのレベルはミシュラン星付きレストランのシェフがこの価格では絶対に無理と驚嘆するほどのクオリティです。先日gooランキングが発表した「一番コスパがいいと思うファミレスランキング」でも並みいるファミレスチェーンを抑え、堂々1位を獲得しました。
このように外食界のコスパリーダーとして消費者の信頼を集めるサイゼリヤが、その期待を裏切らないために値上げしたくないと考えるのは当然かもしれません。しかし、思いだけではビジネスは継続できません。背景にどのような勝算があるのでしょうか?