日本コロムビアのクラシック部門プロデューサー岡野博行さん(1962-)が、初めてライブで本田美奈子さんの演奏を聴いたのは2002年8月31日のことだった。会場は東京オペラシティ・コンサートホールである。岡野さんは当時、「クラシック以外の歌手が歌うクラシックのアルバム」という企画を考えていた。このコンセプトに合う歌手を探していたのである。
コンサート終演後の楽屋で出会う
この日のコンサートは、手塚幸紀さんが指揮する東京フィルハーモニー交響楽団による「グラツィエコンサート」と題されたもので、2002年は3回目の演奏会だった。毎年1回、東京オペラシティが主催する企画演奏会だったと思われる。
本番の何日か前、高杉敬二さん(BMI)が五月女京子(さおとめきょうこ)さんへ「聴きに来ない?」と声をかけたのだそうだ。五月女さんは1999年11月の東京シティフィルのポップスコンサート、2000年3月のチャリティコンサート(オケは東フィル)で本田美奈子さんをゲストに招いた企画を立案したプロデューサーである(連載第15回参照)。
「高杉さんから電話をもらって、すぐに『ぜひ聴いて』と日本コロムビアの岡野博行さんを誘いました」(五月女京子さん)
岡野さんはプログラムの中で、ある曲の歌唱を聴いて一驚した。そして、「本田美奈子さんならばクラシックのアルバムをつくれる!」と強く確信したのだそうだ。
その曲とは何だろう。
11年前の東京オペラシティに行って、追体験してみることにしよう。
2002年8月31日 グラツィエコンサート
会場・東京オペラシティ・コンサートホール
出演・本田美奈子
ゲスト・石井一孝
司会・前場美保子
指揮・手塚幸紀
管弦楽・東京フィルハーモニー交響楽団