サルコペニア肥満の
セルフチェック方法

 多くの場合、サルコペニア肥満の症状が顕著になるのは60歳以上だが、40~50代でもすでにサルコペニア肥満、またはその予備軍になっている人もいるという。まずは、以下のチェック項目で自分の状態を確認しよう。

【サルコペニア肥満セルフチェック】
□BMI指数の結果が25以上で「肥満」と診断された
□若い頃に比べて、歩くスピードが遅くなっている
□高さ50~40cmのイスから片足で立ち上がれない
※一つでも該当すればサルコペニア肥満予備軍

 一つ目は、肥満度のチェックだ。

「私たちが行った調査では、60歳以降にサルコペニア肥満になる人の多くが、中高年まで肥満体形だったという結果が得られました。つまり、脂肪を多く蓄えたまま筋肉が減ると、サルコペニア肥満に移行しやすいのです。そのため、高齢者の肥満はもちろん、中高年代でBMI指数が25以上の人は、今後サルコペニア肥満になるリスクが高いといえます」

 二つ目は、筋肉の衰えに関する項目。歩くスピードは、昔の自分との比較だけでなく、同年代の人よりも歩くのが遅い場合も該当する。

「そして、三つ目の項目は、加齢による運動器の機能低下を指す『ロコモティブシンドローム』のセルフチェックと同じ方法です。脚の筋肉量の少なさに対して上半身が重すぎると、40cmの高さから片足で立ち上がれなくなります。以前、私が勤務していた女子大の授業でも同じ検査を行ったところ、数人の学生が片足で立ち上がれませんでした。若者世代ではまれですが、普段から運動をしていないと年齢に関係なく筋肉は減ってしまうのです」

 誰もがサルコペニア肥満のリスクを抱えているのに加え、2020年から続くコロナ禍は、今後さらにサルコペニア肥満の人を増やす可能性がある、と田邉氏。

「特に注意が必要なのは、リモートワークで仕事をしていて、あまり運動をしていない人。オフィス出社が必須だった頃は、家から駅への徒歩移動や満員電車で立つ時間もあり、図らずも通勤そのものが“運動”になっていたんです。実は、電車やバス通勤の人は、車通勤の人に比べて糖尿病になりにくいというデータもあります。不要になった通勤の時間を運動に充てていれば問題ありませんが、ずっと家の中にいる人は、体を動かす機会を失っているといえます」

 運動量が減っているのに、食事の量はコロナ前と同じ。そんな生活を送っていると、エネルギーが適切に消費されず、どんどん体に脂肪が蓄積されていくという。

「個人で気をつけるだけでなく、企業もリモートワークの社員には、毎日30分間の運動をするように呼びかけたり、実際に体を動かす時間を与えたりするなどの対策をしなければ10年後、20年後には多くの社員が生活習慣病を患ってしまう可能性があります。今後もリモートワークを続けるなら、企業も働き手の健康を気遣う必要がありますね」