サンモリッツに向かう氷河特急サンモリッツに向かう氷河特急 @iStock

海外旅行ガイドブックの決定版『地球の歩き方』から、今回紹介する記事は「スイス旅行で絶対乗りたい〈世界一遅い特急列車〉」です。「世界一遅い特急列車」と異名を持つ、スイスを代表する山岳鉄道、氷河特急。全長291kmを約8時間で走破するため単純計算すると平均速度は40km弱。それでもずっと人気を誇っている観光列車です。トンネルの数91、鉄橋の数291。途中ラックレール(歯車式レール)やループ線を使ってスイスアルプスを横断していきます。全区間の開通は1926年で、氷河特急が運行を開始したのが1930年。蒸気機関車だった時代から現在に至るまで約90年に渡ってスイス観光の主役の座に君臨してきました。現在では年間約25万人の観光客がこのアルプス横断の旅を楽しんでいます。そして2019年、この氷河特急の1等車、2等車に加え、新しい上級クラス、エクセレンス・クラスが誕生しました。それでは今回はエクセレンス・クラスの楽しみ方をご紹介しましょう。(文/ねもとかずや、地球の歩き方編集部)

ツェルマット駅から
エクセレンス・クラスに乗車

 氷河特急は、スイス東部にあるグラウビュンデン州サンモリッツと、南部のヴァレー州ツェルマットを結んでいます。エクセレンス・クラスは、サンモリッツとツェルマットどちらからも乗車でき、サービスは同じ。1日に1両だけ通常の氷河特急に連結されてそれぞれ出発します。

 さて今回はツェルマットから出発しましょう。出発時刻の30分程前に氷河特急は入線。いつもは静かなツェルマット駅ですが、氷河特急が出発する時刻だけは長距離の旅行客が集まり華やかな雰囲気に包まれます。ツェルマット発の場合、エクセレンス・クラスは一番先頭の車両です。6両編成の一番後ろから2等車、キッチンカー、1等車……と編成全体を眺めるように歩いてホーム一番前の車両へ。そこには赤い絨毯が敷かれたエクセレンス・クラス専用デスクが設けられ、担当のコンシェルジュがにこやかな笑顔でお客様をお待ちしています。