世界2位ピアニストで経営者、反田恭平氏が「音楽界の寵児」となった舞台裏「音楽界の寵児」の軌跡とは?(2021年10月、第18回ショパン国際ピアノコンクール本選で演奏する反田恭平氏) Photo:EPA=JIJI

おすすめポイント

 2021年10月に開催された世界最高峰のピアノコンクールである「ショパン国際ピアノコンクール」で、日本人が2位を獲得した。本書『終止符のない人生』の著者で、今世界が最も注目するピアニストの一人である反田恭平氏だ。日本人としては内田光子氏以来51年ぶりの快挙であった。初の自伝である本書には、彼の生い立ちから現在までの歩み、そして未来の展望まで余すところなく叙述されている。

『終止符のない人生』書影『終止符のない人生』 反田恭平著 幻冬舎刊 1760円(税込)

 反田氏が脚光を浴びている理由は、その卓越した才能はもちろんだが、革新的な思考や活動にもある。音楽家であると同時に起業家・経営者の顔をもつ彼は、まさにクラシック音楽界の「二刀流」。オーケストラの株式会社化、自身のレーベルの設立、オンラインサロンの開設、SNSを駆使したマーケティングなど、“業界の常識”を覆す型破りな動きは「革命的」とすら評されている。プレイヤーの枠に留まらず、クラシック音楽界全体を見渡す視座は非常に高い。彼の多角的な思考は、起業を目指す人やビジネスパーソンにも大いに刺激を与えてくれることだろう。

 本要約では、反田氏の生い立ちからショパンコンクールとの出会い、ショパンコンクール挑戦の舞台裏、そして現在の活動を中心にピックアップした。コンクールに臨むにあたっての緻密な戦略には、人生をかけた熱意と凄みを感じる。

 その他のエピソードについても濃密で読み応えがあり、すべてを紹介できないのが残念だ。ぜひ本書で実際に「音楽界の寵児」の軌跡を堪能していただきたい。その素顔に共感できる人は多いはずだ。(矢羽野晶子)