自民党保守派の「対韓国」における
「土下座外交」も露呈

 最後に、旧統一教会と自民党を巡る、もう一つの根深い問題である「保守派の二枚舌」について少し論じたい。

 政府が安倍元首相の国葬を強行する理由は「保守層からの支持をつなぎ留めるため」という見方が強い。だが実際のところ、自民党保守派も旧統一教会と密接に関係している。

 そのつながりは、朴正煕政権時代に韓国中央情報部(KCIA)の指示で、旧統一教会の開祖・文鮮明氏が日韓で「国際勝共連合」を創設した1968年にさかのぼる。

 その時に日本で発起人となったのは、自民党に大きな影響力を持っていた大物政治家の笹川良一氏や、安倍元首相の祖父・岸信介元首相ら「保守派」だった。笹川氏は後に辞任したものの、勝共連合の名誉会長まで務めていた。

 また岸元首相は、教団関連団体「世界反共連盟(WACL)」の日本大会推進委員長を担当したほか、旧統一教会主催の「希望の日晩餐会」の名誉実行委員長も務めた(しんぶん赤旗『統一協会 危険な二つの顔』参照)。

日本を「サタンの国」と呼ぶ教団と
保守派が親しく付き合う矛盾

 それから現在に至るまでの50年超にわたって、自民党保守派の内部では自浄作用を働かせることなく、教団と密接な関係を保ってきた。旧統一教会が「韓国を植民地支配した日本は『サタンの国』であり、日本人は贖罪のために寄付をしなければならない」と説いているにもかかわらず、だ。

 加えて、自民党保守派は「従軍慰安婦問題」などに関して日本国内で「声高な主張」を繰り広げる一方、その主張を国外にぶつける努力を怠ってきたように思える。

 韓国側の主張が世界に広がる中、外国の雑誌や新聞に論文を掲載したり、外国の政治家やマスコミを説得したりといった活動を積極的に行ってきたようには見えない。

 保守派は国内で「自主防衛」を主張し、中国や韓国に罵声を浴びせるかのような強気な発言をしているが、一歩でも海外に出れば何も言えないのだ。長年にわたる「内弁慶」な姿勢はまさに、相手国の要求を無条件でのみ続ける「土下座外交」そのものである。

 国内で強気な発言をする一方で、日本を「サタンの国」と呼ぶ教団と集票目的で親しく付き合い、「本業」の政治における外交では極めて弱腰になってしまう――。

 支持層にとっては衝撃的かもしれないが、このように矛盾した「二枚舌」(厳密には三枚舌ともいえる)の姿勢こそが、「愛国」を叫ぶ保守派の真の姿ではないだろうか。

 繰り返しになるが、「選挙に勝てば何でもあり」という政治の慣行だけでなく、保守という信条に反するにもかかわらず、旧統一教会との関係を見直さなかった自民党保守派の姿勢も「政治と宗教」の問題における根源的要因なのである。