民主主義の意義は多元主義の擁護
――民主主義は一気に専制主義に転じることがありうるということでしょうか。
岩本 そうですね、歴史的に見ても民主主義の中から専制主義が生まれることはありました。ヒトラーの誕生前はドイツは民主主義であり、民主的な手続きを経てヒトラーが首相に選ばれたわけです。国民をうまく先導できれば、民主主義の手続きを経て選ばれたトップがその国を専制主義国家に変えることができるといえるでしょう。
また、独裁的な振る舞いの目立ったトランプ前大統領を見ればわかる通り、民主主義国家の内部にも専制主義的な要素が息づいています。
――民主主義の歴史を学ぶことで、民衆がどう専制主義に転じていくのかを知ることができますね。現在のような混沌とした時代だからこそ、改めて民主主義を学び、支持する理由があるように感じました。
岩本 本書では、民主主義の目的は多元主義を擁護することにあると結論づけています。つまり、人々の多様な生き方を最も尊重するのが民主主義であるという考えです。また、民主主義は権力を抑制するための終わりなき過程であるとも著者は語っています。
民主主義は時代や場所によってその形を変化させていきます。生き方の多様性を受け入れながら形態を変えていくその柔軟性こそが、民主主義が今後も生き残っていく強みなのかもしれません。
イギリスの思想家であるジョン・アクトンが「絶対的権力は絶対的に腐敗する」と述べたことは有名ですが、もしそれが真理なのであれば、やはり今後も民主主義は必要とされていくでしょう。権力を監視、抑制する機能を考えると、牽制民主主義こそが理想的な政治制度だといえるのではないでしょうか。
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